ウッドストックがやってくる!

ウッドストックがやってくる! “Taking Woodstock”

監督:アン・リー

出演:ディミトリ・マーティン、ダン・フォグラー、ヘンリー・グッドマン、
   ジョナサン・グロフ、ユージーン・レヴィ、エミール・ハーシュ、
   ジェフリー・ディーン・モーガン、イメルダ・スタウントン、
   ポール・ダノ、ケリ・ガーナー、メイミー・ガマー、リーヴ・シュライバー

評価:★★★




 世界に音楽祭は多々あれど、ウッドストックほど世界に影響を与え、幾度となく語られてきたそれはないだろう。音楽の観点から見れば…なんて狭い視野に収めることなんて、到底できない。どんな分野からでも詳細に語ることのできるスケール。開催されたことがまさに奇跡。ニューヨーク州の小さな田舎町に40万人以上が来場しただなんて!何しろ開催から40年以上経った今でも伝説のイヴェント。当時を知らない者たちでさえ、知っていて当たり前というのだから。

 1969年はアポロが月に降り立った年でもある。人が月に立ったときニール・アームストロングは言った。「That's one small step for a man, one giant leap for mankind」。それはまたウッドストックフェスティヴァルを言い表す言葉とも言えるかもしれない。アン・リー監督は『ウッドストックがやってくる!』でそれを丁寧に描いてみせる。

 実を言うと、リー映画に関しては、巧い作家だと承知しつつも、全面的にはノレないところが常にあった。所謂完璧主義というヤツ。隙というものがあまりにもないのが神経症的に感じられて、芸術的な違和感を覚えてしまうのが野暮だなぁと思うのだ。緻密な構図、多面的な人物設計。的確なその配置。破綻のなさ、行儀良さが、時に窮屈さに繋がっていることがあり、その巧さに感心しながら、冷静にもなるというおかしな事態を引き起こしていた。ところがここでのリーの演出に、そんな息苦しさはほとんど感じない。いつものように達者な術で魅せていはいるものの(デリケートな画面の色合いとギタースコアに注目)、むしろ大らかで伸び伸びとした印象だ。アン・リー映画の箱に収まらない大きさがある。これはもう、題材の魔法、すなわちウッドストックの魔法に他ならないだろう。ウッドストックを描こうとしたら、どんな手段を使ったとしても小さくまとめることはできなくて、押さえ込んでも溢れ出てしまって、でもそれが結果的にいつもの殻を破ることになったに違いない。

 ウッドストックとは一体何だったのか。文献やらドキュメンタリーやら星の数ほど考察がなされてきたけれど、全て的確に言い表したものはないように思う。ラヴ&ピース。自由。宇宙の中心となり、世界を変えて、生をスタートさせた3日間。キーワードはいくらでも出てくるけれど、どれもこれもが不確かに流れていく。リーはそこのところを見逃さない。40万人もの人間が集まり、そこから正のエネルギーも負のエネルギーも溢れ出ていた。喜劇のリズムの中にそれがゆらゆらと立ち上がる。それゆえに何気ない場面でも、思わず涙腺を刺激される。

 物語の中心になるのが、まだ若い青年というのが嬉しい。招致のきっかけは彼の住む田舎町の町興しだというのだ。寂れた町がとんとん拍子で賑やかになっていく過程が、まるで雪玉が転がっていくように加速度をつけて描かれるのが気持ち良い。目立つのは若いパワー。若者が時代を動かしたことがヴィヴィッドに伝わってくる。ディミトリ・マーティンを始めとする若手キャストも皆、生き生きしている。これは青春ドラマでもあるのだ。マーティンの両親を演じるヘンリー・グッドマンとイメルダ・スタウントンの小技連発には大笑い。

 ただ、音楽的な面白さがなかったのはどうなんだろう。やっぱりライヴ本番のあの興奮を捉えることで見えてくることも大きいのではないか。リーは音楽を描かずしてウッドストックを描き出したわけで、それはホント、実は大変な成果だと思うのだけれど、やっぱり勿体無い気がしてしまうのだった。音楽の権利の問題があったのかもしれない。





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