マーシャル 法廷を変えた男

マーシャル 法廷を変えた男 “Marshall”

監督:レジナルド・ハドリン

出演:チャドウィック・ボウズマン、ジョシュ・ギャッド、ケイト・ハドソン、
   スターリング・K・ブラウン、ダン・スティーヴンス、
   ジェームズ・クロムウェル、キーシャ・シャープ、ソフィア・ブッシュ

評価:★★★




 主人公のサーグッド・マーシャルはアフリカ系アメリカ人としては初めて、最高裁判所の判事に上り詰めた人物だという。『マーシャル 法廷を変えた男』は彼が若き日に手掛けた、ある事件を追う法廷劇だ。1941年コネティカット、黒人運転手が雇い主の白人女性をレイプした罪で起訴される。マーシャルは無実を勝ち取れるだろうか。

 まあ、マーシャルが勝つだろうことは物の数分で分かる。全米黒人地位向上委員会(NAACP)の弁護士である彼は言う。「人種のせいで疑われた無実の者を救う」と。観察眼が鋭く、常に冷静沈着。瞬時に状況を判断し、最善の道を選ぶ。もちろん高い志と人を見る目も持っている。つまりマーシャルは、何ともまあ、立派な人物だ。

 映画において、これはさほど強力なプラスポイントにはならない。人はあまりにも立派な人物には、感心はしても、同時に距離感をも感じてしまうものだからだ。チャドウィック・ボウズマンの凛々しい容姿にうっとりはしても、別の世界の住人だと判断してしまうかもしれない。マーシャルの弱さを描いてこそ、初めてその強さが際立つ。それを忘れてはいけない。

 もしかしたらマーシャルを描くことで、当時の差別の実態を炙り出すことを目的にしたのかもしれない。大々的に取り上げられる事件ひとつを眺めても、差別はあからさまだ。判事は差別的で、他州の弁護士の発言は認めない。陪審員の選定も色眼鏡が入り、街中には差別主義者が闊歩している。黒人に協力する白人も暴力の標的になる。

 この映画の美点は、差別の現実とマーシャルの戦いというシリアスな側面を直球で描きながら、エンターテイメントとして、法廷スリラーとして、物語を成立させたことにあるだろう。そういう意味で、MVPはマーシャルに協力するユダヤ人弁護士を演じたジョシュ・ギャッドだ。彼が醸し出すユーモアが深刻さのクッションになるばかりか、ボウズマンとの掛け合いにより、肌の色の違いではないところで生まれる人間同士の繋がりに、仄かに熱を与えるのだから。裁判ではボウズマンではなく、ギャドが前面に出るのも、捻りが効いている。

 …とは言っても、最後ぐらいはボウズマンの大演説も見たかったか。実話をベースにしているがゆえ、自由な創作が奪われた感。実話の弊害は事件そのものの弱さも露呈する。単純な黒人差別の構造に持っていかないのは賢くても、カタルシスを得難い真実と展開だ。マーシャルの尊い精神が受け継がれていく、いや受け継がなくてはならない、その意識が強過ぎるのかもしれない。





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