死の谷間

死の谷間 “Z for Zachariah”

監督:クレイグ・ゾベル

出演:マーゴット・ロビー、キウェテル・イジョフォー、クリス・パイン

評価:★★★




 「アダム」という言葉が出てくる。あぁ、そうか。『死の谷間』はアダムとイヴの話なのかもしれない。放射能に汚染された近未来。どういうわけだか、汚染から免れた谷間の町で、マーゴット・ロビーとキウェテル・イジョフォーが出会う。他の人間が行方知らず、或いは死に絶えた中、ふたりの物語が動き出す。

 寓話めいた設定の中、最初はいかにして困難の中生き延びるか、知恵が絞られる。防護服を用いた徹底した除染。骨の折れる農作業。耕運機の稼働。電力の獲得法。いざというとき、サヴァイヴァル能力が物を言う。どれだけオシャレでクールでも、生命力の弱い者は死んでいく運命。

 だからふたり、ある意味、生き残るべくして生き残ったふたりだ。当然惹かれ合うだろう。実際、どちらも好意を抱いていることは明白だ。ところがイジョフォーは、覚悟を決めたロビーに言う。関係を持ったら、この美しいバランスが崩れてしまうと…。かー!これだからインテリは!イジョフォーのバカ。据え膳食わぬは男の恥という諺を教えてやりたい。

 …と突っ込んだところで出てくるのが、第三のサヴァイヴァー、クリス・パインで、彼の登場がのどかだった空気を揺らすことになる。パインはイジョフォーのように頭では考えない。本能的に動く。ロビーはそれに惹かれ、イジョフォーは危機感を抱くのだ。生き残るには一人より二人、二人より三人。あぁ、でもここでは三人では上手く事が運ばない。

 つまり映画は、人間の欲望や利己的な側面を剥き出しにする。信じられるものが限られる中、人は何を最優先事項にアクションを起こすものだろうか。他人を思いやる余裕はどこまで持てるだろうか。分別を持って他人と接することができるだろうか。そしてある者が行動に出る。自分の思いを叶えるべく。しかし、そうして手に入れるものは、以前とは形を変えてしまっているという皮肉。人間とは、あぁ…。

 三大俳優たちは己のポジションで的確に動く。いつもより柔和なロビーやミステリアスなパインも良いけれど、いちばん面白いのはイジョフォーだろう。おそらく自分の知性と分別というものに対して決して疑問を抱いていなかった男の動揺を生々しく見せる。死の谷間、イジョフォーは人間の弱さと愚かさに打ちのめされる。表面上は何も変わっていないことを装いながら…。





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