告白小説、その結末

告白小説、その結末 “D'après une histoire vraie”

監督:ロマン・ポランスキー

出演:エマニュエル・セニエ、エヴァ・グリーン、ヴァンサン・ペレーズ、
   ジョゼ・ダヤン、カミーユ・シャムー、ブリジット・ルアン、
   ドミニク・ピノン、ノエル・ルボフスキー

評価:★★★




 かつてロマン・ポランスキーと結婚した頃のエマニュエル・セニエは妖しく淫ら、淫靡な魅力が溢れていた。少々品が欠けているのもポイントだったろうか。なるほどポランスキーが選ぶのも頷ける。あれから長く歳月が流れ、セニエを包み込んでいた妖気はすっかり枯れ果てたように見える。ポランスキーは果たして、今のセニエをどう見ているのだろうか。『告発小説、その結末』はひとつの答えかもしれない。

 セニエが演じるのは人気小説家だ。…と書けば、ファッショナブルな世界観を想像するものの、どっこい、セニエが演じるデルフィーヌにスタイリッシュな側面はまるでない。外見は野暮ったく庶民臭く、その所作は雑。化粧っ気もなく、作家としてはスランプ真っ只中。彼女の前に現れる若い女(エル[彼女]と呼ばれる)の方が圧倒的に華やかだ。

 何と残酷なポランスキー。妻を生活感に塗れた「オバサン」として描く一方、若いエルはどこまでも妖艶だ。セニエは「屈辱」を受け入れる。最初こそ後ろに控えていたエルはしかし、いつしかデルフィーヌの人生を乗っ取る勢いで君臨し始めるではないか。演じるエヴァ・グリーンのイメージそのまんま。でもそれこそが皆が観たいグリーンだ。

 ただ、物語が示し始めるある「事実」に気づくと、これはある意味、ポランスキーのセニエへのラヴレターのようにも見えなくもないところが面白い。セニエへの仕打ちを一種のプレイとして見ることももちろん可能だし、おそらく歳を取ることのない魔女的なグリーンをセニエの中に見ることで、永遠の愛を告げているような気もするのだ。

 もちろんこれはクリエイティヴな仕事を生業にしているポランスキー自身の苦悩の表現でもあるだろう。フィクションとノンフィクションの境界を大胆に取っ払い、文字通り、身を削って新しい作品を生み出していく過酷さ。それを映像として表現、それも信頼を寄せる妻セニエに体現させる。「ミザリー」(90年)に見せかけたラヴレターと解釈できる所以だ。

 とは言え、思わず身を乗り出すのは結局、グリーンの怪演だ。セニエとは対照的に思い切り格好良く着飾ったグリーンが、セニエの前では笑顔を振りまきながら、物事を少しずつ自分の思い通りにコントロールしていく。微笑めば微笑むほど、画面に毒が充満する。そして我々は思う。あぁ、これが物を生み出す苦悩か。おそらく観る人によっては完璧にホラーなのではないか。





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