デンジャラス・プリズン 牢獄の処刑人

デンジャラス・プリズン 牢獄の処刑人 “Brawl in Cell Block 99”

監督:S・クレイグ・ザラー

出演:ヴィンス・ヴォーン、ジェニファー・カーペンター、ドン・ジョンソン、
   ウド・キアー、マーク・ブルーカス

評価:★★★★




 物語が始まってから数分して、やり場のない怒りを抱えたヴィンス・ヴォーンが自家用車を破壊する場面が出てくる。素手で窓を割り、サイドミラーを剥ぎ取り、ボンネットをぼこぼこにし、ライトの奥からケーブルを引っ張り出す。声を挙げぬまま獣と化すヴォーンの姿に、早くも危険過ぎる匂いを嗅ぎ取る。

 ところが、ここが賢いのだけれど、『デンジャラス・プリズン 牢獄の処刑人』は語ることを焦らない。獣の危険な素質を一旦静まらせ、今度はヴォーンが置かれている状況を丁寧に描き出す。理不尽なリストラ。妻が流産した過去。当てにできるもののない社会。そんなとき見出す裏社会での光。危険な細胞を抱えたヴォーンに哀愁をまとわせるのだ。こういう風にしか生きられない男。哀しみを背負いながら息をする男。

 腰が据わった演出が信頼できることは、画面の落ち着きを見れば明らかだ。緩急の効いた物語。次々移動する場所。画面の色合いが伝える温度。例えば、ある重要な取り引きが、水辺で行われるあたりなど、分かりやすい。ブツの受け渡し方法の独特さはもちろん、水の匂いや温さを立体的に見せる。見たことのないアクションの空気が立ち上がる。

 静の場面がじっくり撮られるゆえ、突如沸点に達する暴力の凄惨さに唖然とする。もちろん刑務所に舞台を移してからが本番だ。これ以上残酷な暴力はないのではないかと察する過激描写の連続。手足がひん曲がり、目に穴が開き、顔が潰れる。その際の音も掬い上げられる。「残骸」を見つめることも忘れない。血よりも音と痛みと速度が意識された暴力の数々。これがひとりの男によってなされる衝撃。

 ヴォーンの怪演が大きい。トム・ハーディあたりでもハマりそうな役どころにも思えるものの、いやいや、ヴォーン級に立派なガタイがあればこそのそれだろう。普段は一般の成人男性の基準からすると遅いと言って良いほど動きがスロウなのに、アクションに入ると途端に動きが早まる。ただ、ジェット・リー級の素早さはない。でもそれで良い。ヴォーンの動きには重さがあり、それが残酷さに説得力を与えるからだ。銃は使われず、拳で勝負。中国武術的な動きも面白い。

 そうして暴力を積み重ねて出来上がる物語の輪郭が、ラヴストーリーそのものなのに言葉を失う。男の全ての言動の底には、妻と、そして間もなく生まれてくる子どもへの愛情が敷かれていることをまざまざと突きつける。暴力が過激であればあるほど、愛の純度が強調される。暴力を肯定はしなくとも、この愛はいつまでも後を引く。





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