レディ・バード

レディ・バード “Lady Bird”

監督:グレタ・ガーウィグ

出演:シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ、トレイシー・レッツ、
   ルーカス・ヘッジズ、ティモシー・シャラメ、ビーニー・フェルドスタイン、
   スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ロイス・スミス

評価:★★★★




 最初はまず、見たことのないシアーシャ・ローナンに嬉しくなる。注目されたのが「つぐない」(07年)だからか、シリアスなイメージが強いローナンはしかし、喜劇にも起用にハマる女優だった。『レディ・バード』の監督はグレタ・ガーウィグ。それこそガーウィグが(若かったら)嬉々としてやりそうな役どころ。もっと言うなら、ガーウィグの気配を常に感じさせながら、ヒロイン、レディ・バードとして輝いているのだ。自意識過剰な捻くれた方が最高に魅力的。

 そう、高校最終学年に突入した18歳のヒロインは、誰もがそうだったように、素直さとは無縁の毎日だ。サクラメントに飽き飽きしていて、だから大学は東海岸にあるところが希望。母に悪態をつき、親友とぎくしゃくし、ハンサムな同級生たちに勝手に憧れ勝手に失望する。あぁ、嫌になっちゃう毎日。大胆不敵なのに傷つきやすいという、痛々しくも面倒臭いお年頃。ローナンが自らを「レディ・バード」と名づける女の子に生命力を吹き込む。

 捻くれてはいても、まだ濁りはないレディ・バード。ガーウィグはヒロインの難しさを大切にする。褒められるところは少なく、共感できるところも僅かほど。それでもそれを補うべく、彼女を変に飾り立てることもない。そんなことをしなくても、身体の軸に通るハートという名の人間味さえ忘れなければ、彼女が嫌われることはない。いやむしろ好きにならずにいられない。そう信じる描き方だ。ニキビも、ファッションも、品のないジョークも、そのままだから愛しいのだ。

 どこか懐かしい気配は、背景が2002年だからでも、高校生活あるある的エピソードが並ぶからでもない。レディ・バードの悪態の数々が向かうサクラメントが理由だ。街を出たいとばかりこぼすレディ・バードは、自分でも分かっていないものの、結局サクラメントを愛している。それが画面に溢れ出る。愛しているがゆえのつんとした態度が懐かしく、好もしい。

 気づいていないと言えば、己の周りの人間関係がいかに恵まれているかという点もそうだ。彼女に近しい人は皆、その良さを分かっている。でもレディ・バードは分かってもらっていることに気づいていない。だから彼女を愛してくれる人との距離が危うくなる。とりわけローリー・メトカーフ演じる母親との距離感が絶妙。素直でない上に、気づいてもいないだなんて、全くもう、レディ・バードのバカ。でも、人間関係なんて、そんなものだろう。

 結局これは、レディ・バードが自分を知る物語なのだろう。夢を見て、背伸びして、喧嘩して、謝って、恋をして、失って…レディ・バードは失敗を次々重ねる。人はそうして自分を知っていく。ガーウィグが自分をレディ・バードに投影させていることは想像に難くない。もっとシニカルな視線を投げ掛けることもできただろうけれど、時に痛々しくもユーモラスなこの親和的空気を大切にしたのは正解だろう。自分の分身を過剰に辛辣に分析しても、自己陶酔・自己憐憫の沼にもがくのが関の山のはずだ。





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