アメリカン・ソルジャー

アメリカン・ソルジャー “Thank You for Your Service”

監督:ジェイソン・ホール

出演:マイルズ・テラー、ヘイリー・ベネット、ビューラ・コアレ、
   ジョー・コール、スコット・ヘイズ、ブラッド・バイアー、
   ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、エイミー・シューマー

評価:★★★




 戦争を題材にした映画の製作が途切れないのは今に始まったことではないものの、最近目に見えて増えているのは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を扱ったそれだ。21世紀に入り、戦争の形は随分変わった。もしかしたら兵士の肉体的危険は減少傾向にあるのかもしれない。けれど、心にかかる負担も減少しただなんて、到底言えない。

 『アメリカン・ソルジャー』の主人公はイラク帰りだ。マイルズ・テラーが演じる。除隊して、これからまた、新しい人生が始まる。彼は別に夢のような毎日を夢見ているわけではない。妻と子どもたちと一緒に慎ましく暮らしたいと願うだけだ。でもそんな簡単なことが難しくて難しくて、今にも気が狂いそうだ。

 物語は主人公と仲間たちの姿を通して帰還兵の現実を淡々と炙り出す。家族のため、国のために命を危険に晒した彼らが大歓迎を受けるのは最初だけ。その後には過酷な現実が待ち構える。働こうにも仕事はなく、幻覚に悩まされ、記憶は飛び、ドラッグに手を出し、自殺願望が浮上する。愛する人に全てを理解してもらうことは不可能で、戦場の真実を知らない上官からは「弱った姿を晒すな」と怒鳴られる。帰還兵が抱える複雑多岐に渡る問題の数々が、痛い。

 結局、同じ戦場を経験した者同士にしか、その心象は分からないのか。映画はそれを半分肯定し、半分否定する。確かに同じ経験をした者が近くにいるのは心強くもあるのだろう。けれど、結局その傷の詳細を丸ごと受け入れることはできない。そう、身体を蝕む孤独からはどうしたって逃れられない。テラーや共演俳優たちは、その身体の変貌を誠実に捉えて見せる。見世物にすることもなく、演技のアピールに走ることもなく、その傷を視覚化する。

 演者が節度ある立ち位置を守っているため、終幕に用意される裏社会の人間が絡んだエピソードが物語から浮いて見える。ドラマ性を極力排したがゆえに見えてくるものに賭けられていたのに、突然そのルールが破られる。サスペンスを意識したかったことは理解できるものの、ここはぐっと堪えて欲しかった。

 心を病んだ者に手を差し伸べたい。作り手の気持ちが良く表れたエピソードが胸に残る。頭に傷を負い先に帰還した仲間との再会と、戦死した仲間の妻とのやりとりが、それだ。どちらも心の傷を直接的に治すことには繋がらなくても、その痛みをそっと和らげてくれる。人間の再生を信じる希望、その匂いが香る。





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