ゲティ家の身代金

ゲティ家の身代金 “All the Money in the World”

監督:リドリー・スコット

出演:ミシェル・ウィリアムス、マーク・ウォルバーグ、
   クリストファー・プラマー、チャーリー・プラマー、ロマン・デュリス、
   ティモシー・ハットン、チャーリー・ショットウェル、
   アンドレア・ピーディモンテ、キット・クロンストン

評価:★★




 その老人の異常性は初登場場面でいきなり明らかになる。家政婦から孫が誘拐されたことを知らされても、その安否を気にかけるより、株価の心配をするのだ。ジャン・ポール・ゲティ、1973年当時、世界一の大富豪。ありあまる富を抱える老人は、果たして、優雅な怪物として『ゲティ家の身代金』に君臨する。クリストファー・プラマーの佇まいがこんなにも綺麗にフィットするとは…。

 …と来れば、老人の日常を覗き見たくなるのは至って普通の心理だろう。もちろん大多数の庶民が一生かかっても僅かほどにも届かない暮らしを手に入れているものの、金を無駄に手放すことは決してしない。「ケチ」という言葉には収まらない金への執着が、その血液の中を流れ行く。だから言い放つ。「身代金を払うつもりはない」。

 老人の登場場面はどんなときも、その怪物性が剥き出しになる。一見紳士的な物腰。けれど、金のためにはどこまでも冷酷になる。物語は息子を誘拐された母親の戦いが本筋で、当然犯人とも駆け引きがあるものの、いちばんの敵は「義父」という皮肉が意識される。映画の致命的な敗因はここにある。

 老人のキャラクターが強過ぎて、ミシェル・ウィリアムス演じる母親を始めとする他の登場人物が、一緒の場面では老人の奇怪な空気に次々呑まれていく。老人が不在(の場面の方が多い)でもその気配は大きく残り、今度は残された者たちが平凡で退屈に見えてしまうのだ。それは残酷な行動に走る犯人一味とて、例外ではない。

 ようやくミシェル・ママが仕掛けるのは、物語が最終コーナーに入ってからだ。金をどうしても用意できないことを悟ったママが、一か八かのはったりを繰り出す。このとき老人に初めて動揺が走るのだ。そこに事件解決の協力者であるマーク・ウォルバーグが追い打ちをかける。このときの老人の空虚な風体はプラマーの力があればこそ。ある意味、最大の見ものだ。

 資本主義の究極の象徴として描かれるジャン・ポール・ゲティの人生とはどんなものだったのか。映画は晩年の一場面を切り取ったに過ぎない。リドリー・スコットとしては、孫の誘拐事件を通して、サスペンスと共にその核心を掬い上げようとしたのだろうけれど、残念、怪物を甘く見過ぎだ。その細胞の分析に、この事件だけではあまりに頼りない。映画は老人に敗北したのだ。





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