ボストン ストロング/ダメな僕だから英雄になれた

ボストン ストロング/ダメな僕だから英雄になれた “Stronger”

監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン

出演:ジェイク・ギレンホール、タチアナ・マスラニー、
   ミランダ・リチャードソン、クランシー・ブラウン、カルロス・サンス、
   リチャード・レイン・ジュニア、フランキー・ショウ、
   ジミー・ルブランク、パティ・オニール、ダニー・マッカーシー

評価:★★★




 2013年4月、ボストンマラソンのゴール付近で起こったテロ事件を描く。…と言っても、犯人追跡を警察側から描いた「パトリオット・デイ」(16年)とは違い、『ボストン ストロング/ダメな僕だから英雄になれた』は被害者側からの物語。ジェフ・ボーマン。彼は両脚を失う不幸に見舞われる。あぁ、とんでもない肉体的・精神的ダメージを克服する話か。…という予想は見事に外される。

 もちろんリハビリの様子は出てくるものの、それに重きは置かれていない。デヴィッド・ゴードン・グリーンが見つめるのはヒーローとは何か、この単純に見える問い掛けの答えだ。ボーマンは両脚を失った翌日、犯人特定に繋がる重要な手掛かりを証言。その二カ月後の退院時には「ボストンは負けない」そのシンボルとして祭り上げられる。

 グリーンは、ボーマンをヒーローとして褒め讃え各イヴェントに引っ張り回す、一連の狂騒をかなり辛辣に見ていて、これが後々に効いてくる。大してボーマンのことを知りもしないのに、彼を奇跡の人のように崇める世間。両脚の切断とそこからの復活という分かりやすいシンボルは、そりゃ一致団結するのに手軽なアイテムには違いないものの、ボーマンにはそれが負担・プレッシャーとしてのしかかる。この際、母を始めとする身内まで、ヒーロー狂騒曲に乗っかるのが、可笑しいやら腹立たしいやら。

 ただし、別にグリーンは「ボストン ストロング」というコピーと、それにより一つになる人々を否定するわけではない。よく災害に見舞われた人に「頑張れ」と声をかけるのは酷いなんて言う。一理あるけれど、本当に大切なことは言葉そのものではなく、その裏に隠れた相手への思いであることは、少し考えれば分かる。グリーンはそして、同じように言葉ではなく、その裏側に潜む思いを丁寧に掬い上げる。グリーンは狂騒を冷静に眺めながら、けれど、心からのエールを贈る。それが分かる演出だ。

 その証拠に物語は、世間が思う頼もしいヒーロー像と葛藤を続ける矛盾に満ちたヒーロー像、ボーマンのそれが重なり合っていく過程に焦点を当てる。軽薄で平凡で、つまりどこにでもいる青年が、遂に本物のヒーローになるまで。被害者であることに甘えていた青年の本当の勝利。誠実な物の見方がここにある。断るまでもなく、ボーマンに扮したジェイク・ギレンホールは素晴らしい。

 ボーマンの甘えとそこからの脱却に見入るのは、その恋人の存在がピリリと効いているからだ。ボーマンがテロ現場にいたのは、マラソンに参加した彼女の応援のためだった。彼女は責任を感じる。けれど、一緒にいるにつけ、自分が彼の甘えの元凶になっていることに気づく。愛する人を支えるというのはどういうことか、タチアナ・マスラニーの演技はそれを見誤らない。

 大盛り上がりのクライマックスは、ボストンを本拠地にするレッドソックスのホームゲームでの始球式だ。イヴェント後にはボーマンを讃える人々が集まる。熱い言葉が飛び交う見せ場なわけだけれど、うーん、どうも終始冷静さが保たれた物語の中では浮き上がってしまった感。安い感動とまでは言わないものの、少々紛らわしい心理誘導ではないか。





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