イングリッド ネットストーカーの女

イングリッド ネットストーカーの女 “Ingrid Goes West”

監督:マット・スパイサー

出演:オーブリー・プラザ、エリザベス・オルセン、
   オシェア・ジャクソン・ジュニア、ビリー・マグヌッセン、
   ワイアット・ラッセル、ポム・クレメンティエフ

評価:★★★




 女優のイメージにも色々あるけれど、オーブリー・プラザのそれは他のどの女優も持っていないものだ。基本的に「そこまでやるか」的思い切りの良さで笑いを取りに来るコメディエンヌなのだけど、彼女は同時に怖くもあるのだ。頭のネジが緩んでいて、いつ爆発するのか分からない狂気を秘める。彼女の暴走を笑いながら、でも観客は気づくだろう。同時にどこかゾッとしたものを感じている自分を。

 …と来れば、彼女が『イングリッド ネットストーカーの女』の主演女優に選ばれたのも頷ける。ネット依存症、或いはSNS依存症とでも言うべき彼女は、Instagramで華やかなLAライフを発信する(芸能人ではない)美人(エリザベス・オルセンがさすがに巧い)を目指してお引越し。彼女と友達になりたいという願いを叶えるべく、少しずつ彼女の日常に入り込んでいく。プラザ、怖えぇぇぇ。

 いや、ホント怖い。「ルームメイト」(92年)のタイトルが出てくるけれど、まさにその現代版だ。インスタで紹介された髪型やファッションを真似るのは序の口。行きつけのレストランで食事。愛読書を隈なくチェック。行動のいちいちを追跡し、行動パターンまでコピーする。何しろヒントはネット上に溢れている。もしかしたら何もないところからお目当ての人物との距離を縮めるのは、思いの外、簡単なのだ。SNSの闇の一部分。

 けれど、それはSNSの表面的な部分での闇だ。こちらは警察に相談すれば何とかなるかもしれない。本当に恐ろしいのはヒロインを生み出すSNS社会の構造だ。フォロワー数や「いいね」獲得に懸命になり、これみよがしなハッシュタグが次々登場。紹介写真は理想のライフ自慢(リア充って言うんですか?)。羨望写真を撮るためには過剰に美を盛るのを忘れない(インスタ映えって言うんですか?)。それに夢中にハマっているときは、まだ良い。問題は夢から醒めたときだ。現実逃避していた自分を突きつけられ、孤独が一挙に押し寄せる。無理をして堰き止めていた分、強烈な勢いだ。

 バットマンネタや愚かなクセに勘だけは鋭いトラブルメーカーを放り込んで物語に捻りを加える脚本が良い。現実と理想のギャップ、それをあからさまに見せる展開に現実感がある。ただ、遂にヒロインの狙いが露わになってからは、さらなる爆弾が欲しかったところ。プラザが往生際悪くジタバタするところに、新たなる闇を見せてくれたら、傑作になったかもしれない。

 ただ、それでも加害者であると同時にネット時代の犠牲者でもあるヒロインに僅かな光が差し出されるあたりは良い。借家の管理人としてオシェア・ジャクソン・ジュニアを投入、ヒロインが置かれている状況の鏡として機能させながら、ネット社会に足をすくわれないコカイン常習者として、人間の体温を感じさせる。プラザはそれに気づく(でも…)。そして、彼女を突き放した人々は…。まあ、真っ当な価値観をぶち破ることはないものの、皮肉は最後まで持続している。





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