アイ,トーニャ 史上最悪のスキャンダル

アイ,トーニャ 史上最悪のスキャンダル “I, Tonya”

監督:クレイグ・ギレスピー

出演:マーゴット・ロビー、セバスチャン・スタン、アリソン・ジャニー、
   ジュリアン・ニコルソン、ボビー・カナヴェイル、
   ポール・ウォルター・ハウザー、ボヤナ・ノヴァコヴィッチ、
   ケイトリン・カーヴァー、マッケナ・グレイス

評価:★★★




 全く個人的な見方になるけれど、フィギュアスケーターは芸術性で勝負の可憐なタイプと力で押し切るパワフルなタイプに分けられる。トーニャ・ハーディングは完全に後者だ。何を表現したいのかさっぱり分からないものの、猪突猛進型演技には、雑でも凄みがあった。そして『アイ,トーニャ 史上最悪のスキャンダル』を観る限り、パーソナリティもそれに似たものがある。納得だ。

 ハーディングの半生から切り離せない言葉は「ホワイトトラッシュ」だ。学歴や仕事に恵まれない低所得アメリカ白人層を指す。金のかかるフィギュアスケートを何故諦めなかったのかは分からないけれど、リンクを離れたハーディングは妖精とは程遠い。思わず頭を過るのはTVシリーズ「シェイムレス 俺たちに恥はない」(11年~)だ。毎回開いた口の塞がらない非人間的日常が描かれる。ホワイトトラッシュを取り上げた映像作品の決定版。ハーディングがそこに顔を出しても全く驚かない。

 ただこの映画が「シェイムレス」と決定的に違うのは、笑わせ方だ。「シェイムレス」は明白に端から笑いに貪欲なのだけど、こちらはあくまで現実との密着に拘る。父と別れ、教育もろくに受けられず、友達もできず、スケートに縋るしかなかった、人格形成に重要な幼少期。映画はその悪の根源をふたりの人物に見る。彼らが酷過ぎて、一周回って、もはや可笑しいのだ。

 ハーディングは母と男に恵まれなかった。ふたりの描写が実に生々しい。アリソン・ジャニーが見せる冷徹な母の姿は、「貧しくても心は豊か」なんてものが救いにならないことを知っている者のそれだし、セバスチャン・スタンが体現する暴力夫のだらしなさは、人は変われないという現実をまざまざと見せつける。どちらも圧倒的にリアル。

 ふたりの愚か者の間で揉まれるハーディングが捻くれるのも、そりゃ当然と言いたくなる悪循環。マーゴット・ロビーはハーディングのある意味で犠牲者的な側面をちらつかせながら、それでも同情は不要とばかりの、いかにもハーディング的ヴァイタリティを放出している。それゆえのナンシー・ケリガン襲撃事件。だからこそのオリンピック靴紐事件。褒められない。褒められないけれど、笑えて、かつ、ちょっとそのハングリー精神に拍手くらい贈っても良い気分になる。

 思いがけず面白く観たのは試合場面だ。通常のフィギュア中継では決して見られない、いかにも映画的な構図、それを活かす撮影と編集になっていて、これがパワー勝負のハーディングのスタイルに見事フィットしているのだ。例えば、初めてトリプルアクセルをキメるときを始めとするジャンプ場面。或いは、カメラが演者のハーディングから観客席・審査員席に飛び込んでいく場面。楽しい。もっと試合場面を増やして試合中のハーディングの葛藤を見たかったぐらいだ。





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