ザ・スクエア 思いやりの聖域

ザ・スクエア 思いやりの聖域 “The Square”

監督:リューベン・オストルンド

出演:クレス・バング、エリザベス・モス、ドミニク・ウエスト、テリー・ノタリー

評価:★★★




 「フレンチアルプスで起きたこと」(14年)もそうだったように、リューベン・オストルンド映画に出てくる人は、基本的に悪人ではない。ただ、見習いたくはない。彼らは言わば、どこにでも転がっている平凡を具えている。これがラース・フォン・トリアーやミヒャエル・ハネケだと悪意の塊が顔を出すところなのだけど、オストルンド映画では平凡こそ命だ。

 『ザ・スクエア 思いやりの聖域』の主人公クリスティアンは平凡とはかけ離れて見えるだろうか。彼は現代美術を展示する美術館のキュレーターで、社会的には成功者と見なされる。生地の良い高級スーツ。ピシッと固められた髪。スラリとしたスタイル。眼鏡のフレームが赤なのに恐れ入る。けれど、演じるクレス・バングの功績か、彼はどこかチープな気配を漂わせる。

 クリスティアンが高みから転がり落ちていく感じが可笑しい。とある朝、人が大勢行き交う中、善意を見せたことでスリに遭ったことをきっかけに復讐を進め、しかしこれが結果的に彼の運命を大きく狂わせていく。不条理と言って良いだろう。オストルンドはそして、ここに人間のどうしようもなくチンケな本質を絡める。

 オストルンドは人間を決して好意的には見ていない。温かなハートは誰もが持っているわけではないだろうし、親切にすればそれが自分に返ってくるだなんて楽観的が過ぎる。人間とは何と利己的で、差別的で、愚かなのかと嘆いている。ただ、それでもオストルンド映画に出てくる人々は憎めない。オストルンドが、そういうちっぽけな人間たちの、それであるがゆえの愛しさを見出しているからだ。どうしようもない。でも俺はだから人間が好きなんだ。そんな匂いが微かに香る。

 クリスティアンが新たに発表する作品は、床にマークされた「正方形」だ。正方形の中は、信頼と思いやりの聖域であり、かつ誰もが平等に扱われるのだという。何のこっちゃと突っ込みたくなるものの、奴は本気だ。芸術というものを揶揄うような視線は常に感じられ、それに気づく度にドキリとする。すぐ傍らには貧困、格差、暴力といった社会問題が転がっている。それを見せる画から離れられないからだ。

 クリスティアンはこんな作品を展示しながら、それを否定するような、正反対の難題に手足を縛られていく。後半になると、いよいよ本当に気の毒でしかないのだけれど、そんな風に分析的に見ている場合ではない。彼はもちろん現代人の化身だ。彼を笑いながら胸を締めつけられる。気がつけば作品自体が美術館の展示品のような佇まい。前作に比べると分析性、客観性が失われている分、やや鈍く感じられる箇所もあるものの、やっぱり巧い。





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