女は二度決断する

女は二度決断する “Aus dem Nichts”

監督:ファティ・アキン

出演:ダイアン・クルーガー、デニス・モシット、ヨハネス・クリシュ、
   サミア・シャンクラン、ヌーマン・アチャル、ウルリッヒ・トゥクール

評価:★★★




 愛する家族を殺された者による復讐の物語と言うと、今も昔も「狼よさらば」(74年)が引き合いに出される。けれど、21世紀に入って20年近く経とうとしている時代、そのような単純さはまるで現実を映し出してはいない。ドイツ、ハンブルクで夫と息子を殺されたカティヤという女を主人公にした『女は二度決断する』を手掛けたファティ・アキンは、もちろんそのことに気づいている。

 事件はテロに姿を変える。狙いはトルコからの移民。被害者に狙われるだけの非はない。散らばった偏見。溢れる憎悪。ネオナチの存在。司法に運命を託せば、望むような判決にはそっぽを向かれる。そう、世界は不条理に動く。そうか。世間に当てにできるものなんてない。それならば自分が…。

 カティヤの視線を通して描かれるストーリーには哀しみと怒りが満遍なく敷かれ、それが常に衝突を繰り返す。当然彼女に肩入れする。常に手に入れた幸福な生活を奪われただけではない。もはや光の全く見えない箱に閉じ込められてしまったかのような絶望が、彼女の宇宙を支配する。

 カティヤを演じるダイアン・クルーガーの肉体から目が離せない。絶望が観ているこちらにまでせり出し、包み込む。クルーガーは大抵の映画で美しく装い、現実感がないほどのゴージャスな日常に難なく溶け込む。ところがここでは、生活感をたっぷり放出する。アキンはクルーガーのシワや毛穴までを躊躇うことなく捉え、彼女の絶望を観る者と共有させることに成功する。

 だからこその終幕のサスペンス。憎き犯人の居所を突き止めたカティヤの「復讐」が、観客との間にちょっとした距離を作るのだ。我々は彼女の絶望を共有し、かつ理解した気でいたけれど、それは本当だろうか。誰にも相談することなく、暗闇の中でもがき続ける彼女を、ただ知った気でいただけではないか。事実、登場人物の中に彼女の世界に本当の意味で入り込む人物は出てこない。彼女は自身でもそれに気づいていたはずで、それだからこその選択、それが衝撃を生む。

 物語は三章に分けられる。家族を亡くした哀しみにより堕ちる一方の第一章。裁判の過程で社会との距離を思い知らされる第二章。静かに犯人に忍び寄る第三章。この内、第二章だけはやや味気ない。裁判空間ならではの窮屈な掛け合いが単調に映る。話を整理する効果に寄り掛かり過ぎたか。ただそれでも、この章におけるカティヤと犯人の父親との会話は胸に残る。実はカティヤと同郷だった父親が言う。「いつかコーヒーを飲みに寄って下さい」。一見場違いなこの言葉がいつまでも後を引く。カティヤにはどう届いただろうか。





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