ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男

ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 “Darkest Hour”

監督:ジョー・ライト

出演:ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット=トーマス、
   リリー・ジェームズ、ベン・メンデルソーン、スティーヴン・ディレーン、
   ロナルド・ピックアップ、ニコラス・ジョーンズ

評価:★★




 言われなければ、ゲイリー・オールドマンとは気づかない。俳優が役柄に化けるには様々な方法があるけれど、第二次大戦下の英国首相ウィンストン・チャーチルに挑むオールドマンはメイキャップの力を借りる。実際のチャーチルとオールドマンは似ても似つかぬ風貌。しかし差し出される映画のチャーチルは、あぁ、驚くほど「チャーチル」だ。オールドマンの面影がほぼ消失している。

 これが良いことなのかどうか。視覚効果で不自然なまでに若返らせるよりは明らかに良いけれど、ここまで俳優の素を消してしまうのは、俳優という職業へのある種の冒涜に当たるのではないか。俳優観察を楽しみにしている者としてはそういう思いも過るのだけれど、メイキャップがオールドマンの演技を殺していないあたり、これは支持するべきなのかもしれない。

 実際、『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』はオールドマン ショー、チャーチル ショーだ。就任直後からアドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツと最後まで戦い抜くべきか、それとも英国に有利な条件を引き出して和平交渉に入るべきか、という難題を突きつけられるチャーチル。ジョー・ライト監督は執拗に変身したオールドマン、すなわちチャーチルの顔のアップを撮る。彼自身としては戦い抜くべきだと思うものの、果たしてそれが本当に正解なのか、そこに葛藤が入り込む。ライトはチャーチルのアップを通して苦悩を差し出し、リーダーとはどうあるべきかを探り出す。

 とにかく光の届かない暗い屋内での掛け合いが続く。圧倒的な不利な戦況にある、その息苦しさがチャーチルのアップと共にじりじり浮かび上がるのが効果的だ。ブリュノ・デルボネルによる撮影が映し出すチャーチルの焦燥がそのまま戦場を映し出しているかのようだ。ただ、その一方、突然チャーチルが地下鉄に繰り出して国民の声を聞く件は作為的で興が醒める。実話なのだろうか。ここでも地下という息苦しさが選ばれているあたりの徹底は讃えたいけれど…。

 それを軸に愛国心をベースにした英国万歳的気配が立ち込めるのは大いに疑問が残るところ。議会でのチャーチルの演説は大変有名で、名スピーチとしても知られているようだけれど、不屈の精神を掲げた物語の感動をそこに置くのは、映画のクライマックスとしては幼い気がする。ただ、英国万歳なんて言っても、能天気さからは全くかけ離れているのは有り難い。

 身を乗り出すのは、実はチャーチルに関する細かなトリヴィアだったりする。新聞に掲載される逆のVサイン。一日中葉巻と酒塗れの生活。帽子の膨大なコレクション。頭の上がらない妻の存在と、英国王との微妙な距離。とりわけクリスティン・スコット=トーマス演じる妻、ベン・メンデルソーン演じるジョージ6世とのエピソードが可笑しい。チャーチルの人となりに愉快な隙ができるのだ。





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