ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書

ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 “The Post”

監督:スティーヴン・スピルバーグ

出演:メリル・ストリープ、トム・ハンクス、サラ・ポールソン、
   ボブ・オデンカーク、トレイシー・レッツ、ブラッドリー・ウィットフォード、
   アリソン・ブリー、ブルース・グリーンウッド、マシュー・リス

評価:★★★




 もちろん日本も対岸の火事ではない。ドナルド・トランプ現米政権が抱える爆弾と呆れるほど見事にリンクする題材を扱う『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』のことだ。1971年、リチャード・ニクソン政権下で、アメリカ政府が長年ひた隠してきた極秘文書の存在が明らかになる。地方紙「The Washington Post」はそれを公表しようとするものの、多方向から圧力が入る。

 正直なところ、政治が絡んだ映画はあまり好みではない。けれどそこはさすがスティーヴン・スピルバーグ。そういう観客も飽きさせないよう、至るところに映画の技を光らせる。登場させる政治家は僅かに絞り、あくまでThe Washington Postの記者たちの視線を守る。それを軸に娯楽映画でもお馴染みの高速演出で物語をどんどん展開させていく。

 人や机、資料が溢れる新聞社内のカメラの動きは滑らかの一言。省略は効率的で、その編集は物語のスピードを一切殺さない。アンサンブル劇の醍醐味のひとつである人物の出し入れも神がかっている。まだパソコンが世間に浸透する前の時代、黒電話やタイプライターが出てくる空間の再現もお手の物だ。

 結局The Washington Postが文書を取り上げ、司法でも勝利したことは良く知られている。その予め知らされた未来に向かって走るストーリーがそれでも興奮させるのは、マスメディアと政府の戦いに臨場感があるからだ。そのためには綿密なリサーチが必要になる。記者と政治家の関係。他社に送り込まれるスパイ。情報提供源の存在。立ちはだかる法律。発行人と編集長の立場の違い。細部の綿密な描き込みが、物語の現実感を力強いものにする。

 「報道の自由」を守るには報道することだ。そう信じる者たちの戦いに不屈の闘志が感じられる。ただ、そこに発行人であるメリル・ストリープの姿がほとんどないのは気になるところ。もちろん彼女自身も報道の自由を信じている。けれど、彼女は同時に会社の存続も考えなくてはならない。記事ができあがる現場よりも社交の場への出現率の方が高く、ややストレスが溜まるのだけれど(それまでは編集主幹のトム・ハンクスが大層格好良く引っ張る)、だからこそ、遂にストリープが覚悟を決めて反対派を粉砕する件は、タメが十分過ぎるほど効かされている分、本当にすっきりする。スピルバーグ、この演出上手!

 …と、そう、スピルバーグ映画は話にさほど興味が持てなくても、或いは社会派の匂いが極めて強いときでさえも、娯楽映画の気分で楽しめてしまうのがスゴイのだ。観客の生理を知り抜いた名匠が、我々の快感のツボを次々押していく。物語に感動しているのか、それとも演出そのものに感動しているのか、その境界が分からなくなる点が気にならなくはないものの、それでも最後には感心が勝つ。やはりスピルバーグは偉大なのだ。





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