ラッキー

ラッキー “Lucky”

監督:ジョン・キャロル・リンチ

出演:ハリー・ディーン・スタントン、デヴィッド・リンチ、
   ロン・リヴィングストン、エド・ベグリー・ジュニア、トム・スケリット、
   ジェームズ・ダーレン、バリー・シャバカ・ヘンリー、べス・グラント、
   イヴォンヌ・ハフ・リー、ヒューゴ・アームストロング

評価:★★★★




 あのハリー・ディーン・スタントンが大々的に取り上げられる。当然想像するのは、気難しく不健康な偏屈ジイサンだ。果たして、それは裏切られる。確かに無用な愛想はないし、煙草はバカバカ吸う。けれど基本は、無害な健康ジイサンだ。ヨガがまさかの日課。冷蔵庫にはミルク。散歩も積極的だ。意表を突く。

 ところがそのジイサンが、あることをきっかけに「生」や「死」、或いは「人生」について考え始める…というのが『ラッキー』の話。…と言っても小難しいことは何もなく、毎日のルーティンの中にその断片がさらっと紛れ込む感じ。全く仰々しくないのが、スタントンらしく好ましい。

 とにかくスタントンの佇まいが見ものだ。撮影当時は90歳前後のはずだけれど、足取りはしっかりしているし、テンガロンハットにネルシャツ、ジーンズにブーツというカウボーイスタイルが恐ろしくキマッている。何も格好つけることないまま、でも最高に格好良い。見えてしまった人生の終わり。でもジイサンは別に新しいことに挑戦しようなんて思わない。どこまでも普段の自分であり続け、それこそが演じるスタントンそのものに見える幸せ。

 それでも町の気の好い人々(デヴィッド・リンチ登場にニンマリ)との会話の中には、人生の何がしかの真実が、お茶目にひょいっと顔を見せる。辛く厳しい戦争の記憶。爬虫類のエサ用に育てられるコオロギ。自由を求めて脱走したリクガメ。活気に満ちた誕生日パーティ。日常の傍らには常に無情がつきまとう。

 知り合いの誕生日パーティでスタントンが突然歌い始める場面は映画のハイライトだろう。祝福の気持ちだとか、感謝の表れだとか、そんな分かりやすい感情の流れで始まる歌ではない。ただ、ジイサンは歌いたくなったのだ。歌詞の切なさもさることながら、そうしたくなったジイサンの本能と、それと密着した歌声。そこに宿る美にグッと胸を掴まれる。

 作中、色々な意味で飛び交うのが「nothing」という言葉だ。とりわけ「全てはなくなるもの」という意味で使われる「nothing」が前面に出る。ジイサンの全てを悟ったような気配。その後、ジイサンはある答えに辿り着く。このときの世にも珍しいスタントンの表情は、あぁ、この映画そのものではないか。『ラッキー』とは乗り込んだ潜水艦内でつけられたジイサンの愛称だ。なるほど、“ラッキー”スタントンにその表情、似合っているんじゃない?





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