マザー!

マザー! “Mother!”

監督:ダーレン・アロノフスキー

出演:ジェニファー・ローレンス、ハヴィエル・バルデム、エド・ハリス、
   ミシェル・ファイファー、ブライアン・グリーソン、ドーナル・グリーソン、
   ジョヴァン・アデポ、クリステン・ウィグ

評価:★★




 炎の中で皮膚を爛れさせる女。壁の中で動く心臓。荒れ果てたところから美しく再生する家。人間の撮り方を中心にどこか絵画を思わせる撮影。『マザー!』が醸し出す空気はのっけから現実感がないものばかりで、しかも監督はダーレン・アロノフスキー、何か仕掛けていると考えるのが妥当だ。果たして、森に囲まれた郊外に住む詩人の夫とその従順な妻は、突然の来客を招き入れたことをきっかけに、様々な苦境に立ち向かわねばならない。

 詩人のファンだという初老の男とその妻、そして彼らの息子たちの、客である立場を忘れた傍若無人な振る舞いを細かに描く謎だらけの展開。その中で最も疑問として浮かぶのは、詩人と妻の過去が全く見えてこないところだ。まるである日突然、目が覚めたときには夫婦で、気がつけば色に乏しい家の中、その修復と詩の創作が始まっている、そんな気配。そして振り返ってみれば、その気配は意図して創り出されたものだと分かる。そう言えば彼らには、名前もない。

 アロノフスキーが設定、展開、物語をあるメタファーとして描いていることが読めてくる。それが明確になるのは後半になってからゆえ、はっきり書くのは避けるけれど、まあどんなに鈍感に生きている人でも知っているものがモチーフだ。それに気づいたとき、映画全体がまるで別のものになる。なるほど隠喩は至るところに散りばめられている。

 いちばんの問題は、それに気づいても「だからどーした」という感想がいの一番に出てくるところだ。周到に考え抜かれた世界観であることは分かるし、その細部描写は実に凝っている。けれど、そのために煽られる不快でしかない画の数々を、我々は有り難く見なければならないのか。アロノフスキーはもしかしたら、あのモチーフをこう提示する才能に感心して欲しいのかもしれない。そうか、確かに感心する。でも胸揺さぶられることもない。

 こんな風に自信満々に、ある種の傲慢ささえ湛えながらの演出には、大抵嫌悪感しか感じないものだ。それでも目を離したくはない気分。何故か。物語の中心にジェニファー・ローレンスがいるからだ。ローレンスが演じる妻は、基本夫に従順だ。差し出される出来事に思うところはあっても、最終的には受け入れる。簡単に言えば受け身の人物で、苦難に必死に耐えながら、その胸の中に様々な感情を溜め込んでいく。これがローレンスのキャラクターに見事にハマるのだ。

 「ウィンターズ・ボーン」(10年)「ハンガー・ゲーム」(12年)「ジョイ」(15年)等が分かりやすい。虐げられながら、それに必死に立ち向かう。そこに最も熱量を感じさせる女優がローレンスなのだ。そしてそう、この映画はそういう彼女の特質を、見ようによっては最大限活かしていると捉えられなくもないのだ。ほとんど呆れるしかない怒涛の展開を見せる後半からは、本当にローレンスのアイドル映画のようにも見えてくるくらい。もちろんそう捉えられるのはアロノフスキーにとって不本意だろうけれど、まあ、自らが意図したことは確かに(よほど無知でなければ)伝わるし、泣き叫ぶローレンスの魅力がその橋渡しになっていると思えば、我慢するべきではないか。





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