アイ'ムホーム 覗く男

アイ'ムホーム 覗く男 “Wakefield”

監督:ロビン・スウィコード

出演:ブライアン・クランストン、ジェニファー・ガーナー、ジェイソン・オマラ、
   ビヴァリー・ダンジェロ、イアン・アンソニー・デイル

評価:★★




 ブライアン・クランストン扮するサラリーマンがあることをきっかけに、ガレージの屋根裏で誰にも知られることなく暮らし始める。やることはすぐ隣で暮らす妻とふたりの娘の観察だ。…というわけでどうしても「裏窓」(54年)を連想してしまう。ただ、違和感がある。クランストンは自由にガレージから外に出るので、カメラもそれに合わせて出入り自由。クランストンが外から見える人々の声を充てるのも想像力が足りないのではないか。

 ところが、覗き見る行為に縛られた物語でないことが次第に読めてくる。自分の家庭を外側から見る行為は、間違いなく自分の人生の分析に繋がっていくのだけれど、『アイ'ムホーム 覗く男』が目指すのは、さらにその先にある。クランストンは残飯を漁り、真夜中に動き、容姿はほとんど世捨て人風に変わる。その内面の変化を見せたい。

 「中年の危機」から始まった屋根裏部屋暮らし。クランストンの見た目の変貌を見て思い出すのは「ザ・フライ」(86年)だ。容姿がどんどんハエに近づいていく男を描くホラー。クランストンが近づくのはハエではなくホームレスだけれど、その変化に確かにある種の解放感があるのだ。クランストンは言う。家族から逃げたのではない。自分から逃げたのだ、と。

 金も衣服も食い物もない、限定された空間での暮らしは、不自由には違いないものの、男は一度、そうしてでも一度ゼロになる必要があった。みすぼらしい姿に近づけば近づくほど、クランストンが人生を悟っていくのが可笑しい。ゼロになった男は物事が良く見えるようになり、けれど見えるようになった分、苦悩を深めていくことになる。問題はここからだ。

 次第に狂気めいたものを感じさせ、ホラーを思わせる展開になるのは狙い通りだとしても、そこに陶酔まで加わるのだ。男は究極的に身勝手であり、それならばそんな自分を丸ごと受け入れなければならない。ところが彼は社会の被害者のように振る舞い始めるわ、突然慈悲の意味に感動を覚えるわ、再び自分を家族に差し出そうとするわ…。自ら全てを手放したのではなく、まるで手放さざるを得なかったとして、心を晒し始める。これが気持ち悪い。

 もちろんクランストンの演技は的確だ。特に中盤まではぼろぼろになりながらも「美」のようなものまで感じさせる。けれど、それでも終幕のでたらめな展開は救えない。とりわけ癇に障るのは、観客に全てを委ねる結末だ。何が起こるか、作り手の中にヴィジョンがあるわけではない。本当に放り投げている。己に酔うのは主人公だけではなく、作り手も同様。語らならないことで語るというのとはまるで違うラストショットに過るのは、無責任という言葉でしかないのだ。





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