彼の見つめる先に

彼の見つめる先に “Hoje Eu Quero Voltar Sozinho”

監督:ダニエル・ヒベイロ

出演:ジュレルメ・ロボ、ファビオ・アウディ、テス・アモリン、
   ルシア・ホマノ、セウマ・エグレイ

評価:★★★




 世界がどれだけ広くても、よほど特殊な状況下でない限り、この世に生を受けた命はその成長過程で眩しいくらいに輝くものだ。例えば『彼の見つめる先に』の舞台となるブラジル、サンパウロの高校に通うレオ、ジョヴァンナ、ガブリエルの何と瑞々しいこと。レオが盲目であることが普通とは違うくらいで、三人の心のざわめきが世代を超えて手に取るように伝わる。

 いや、「普通とは違う」という表現は適切ではないか。ジョヴァンナもガブリエルも別段レオを特別扱いしないのが気持ち良いのだ。目が見えない彼を気遣いはするものの、決して過剰に気を回さない少年少女が、無意識のままに個を尊重し、その結果築かれる人間関係。ありふれた風景が清々しい。

 ただし、そこに切なさが入り混じる。恋愛感情が紛れ込むからだ。レオとジョヴァンナ、男と女で作り上げられた関係、そこにガブリエルが転校生として入り込む。最初こそ無邪気だったトライアングルが、微妙に形を変えていく。この映画はその変化を丁寧に見つめていて、それこそがいちばんの見ものだ。

 三人が三人とも切ない。レオは初めての恋に戸惑い、それゆえ勇気が持てない。ジョヴァンナは愛しい人が違う方向を見ていることを察知、けれどそれを乗り越える一歩が踏み出せない。ガブリエルはこれまで知らなかった自分に気づき、やはりどうしたら良いのか頭を悩ませる。ティーン三人が心と身体の変化に対処し切れない甘酸っぱい気配が、懐かしいやら、胸躍せるやら、心締めつけるやら。

 レオがシャワー室の扉にキスする場面。ガブリエルがクラシック好きのレオの部屋にポップミュージックを流す場面。ジョヴァンナが相手の表情を呼んで探りを入れる場面。…と視覚的にも聴覚的にも印象的な場面がたくさん。とりわけレオがあるパーカーの匂いを嗅ぎ、それを着て眠る場面、ガブリエルがシャワーを浴びながら自分の思いを確信する場面、あるふたりが唇を重ねる場面等、性の目覚めを強く感じさせる場面が良い。演者たちも変な気取りがない。

 さて、この映画に関して、この文章ではある一点についてわざと触れていない。それは殊更重要なことではないからだ。作り手は恋をする、その呼吸を捉えたかった、それに尽きるのではないか。レオの交換留学の件については宙ぶらりんなのは惜しいものの、その行方を含め、未来を楽しく想像させる生命力は、見誤られることなく刻みつけられている。





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