しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス “Maudie”

監督:アシュリング・ウォルシュ

出演:サリー・ホーキンス、イーサン・ホーク、カリ・マチェット、
   ガブリエル・ローズ、ザッカリー・ベネット、ビリー・マクレラン

評価:★★★★




 モード・ルイスはカナダの画家。幼い頃からリウマチを患っていたという。当然日常生活で不自由なところが多くなる。創作の裏には血や汗の滲む、壮絶な戦いが秘められていた。…とならないところが面白い。『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』はルイスの伝記ではなく、夫エヴェレット・ルイスとの生活を綴る、愛の物語と呼ぶ方がしっくり来る。

 モードは、不自由な身体が理由だろう、旅をすることがない。だから描く対象は自らが住む田舎の風景(「赤毛のアン」の住むプリンスエドワード島を思い出す)、草木や花々、或いは猫や牛、鳥といった身近な動物が大半。好んで使われるのは明るい色。記憶を頼りに描かれる作品に仰々しいところは一切なく、見る者の頬を緩ませる温かなものばかりだ。作品を扉に開かれる世界は、陽気で幸福に包まれる。

 どうしてそうなるのか。モードの穏やかな人となりによるところも多いだろうけれど(けれど決して気弱ではない)、夫エヴェレットとの質素でも、確かに愛に溢れた生活がいちばんの理由…というのが映画の解答だ。エヴェレットは決して褒められた男ではない。短気だし、口は悪いし、自分勝手だ。けれど憎めない。物語が進むに連れ、彼は極端に不器用で、女に不慣れで、ぶっきら棒な態度は照れ隠しの表れだと読めてくるからだ。暴力を振るい、自分が100%悪いと分かってはいても、決して謝ることはできない男。ひっそり自己嫌悪に陥る男。

 イーサン・ホークがエヴェレットの朴訥な魅力を非常に巧く捉えている。オレサマな立ち居振る舞いの男が確かに女を愛し、けれど上手にそれを伝えられなくて、時に大いに愚かな言動に走るものの、後悔の中彼なりのやり方で必死にフォローするぎこちなさ。愛の言葉はなくても、それがモードの心に届いていく感じ、技あり。ホークはしかも、モードを大芝居で演じるサリー・ホーキンスを立てる立ち位置を軽やかにキープする。

 そう、ホーキンスは大芝居だ。身体を自由に素早く動かせられないモードの、忍耐を強いられる毎日を丁寧に演じている。年齢不詳気味で、滲み出る少女性が大いに活きる。困ったところも少なくないエヴェレットの振る舞いをクッションの柔らかさで受け止める。だからエヴェレットとモードは本当にお似合いだ。寂しい者同士が繋がっただけではない。運命的・奇跡的なふたり。言い換えるなら、ホークとホーキンスの組み合わせが最高だ。

 ふたりの家は酷く小さい。一階も二階もおそらく一部屋だろう。5歩進めば、互いにぶつかってしまう。しかも、元々エヴェレットだけが住んでいて、手入れが行き届いていない。それがモードが入り込むことで、質素なまま明るく可愛らしい家へと変身していく。これが大いに見もの。壁や窓に描かれるモードの絵を光源に、お菓子の家の気配を慎ましく纏い始める。もちろんこれは夫婦のメタファーだ。この夫婦の温かさに触れたら、ある意味、エヴェレットへのモードのラヴレターである彼女の作品を眺めたくて堪らなくなるはずだ。





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