シェイプ・オブ・ウォーター

シェイプ・オブ・ウォーター “The Shape of Water”

監督:ギレルモ・デル・トロ

出演:サリー・ホーキンス、ダグ・ジョーンズ、
   マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、
   オクタヴィア・スペンサー、マイケル・スタルバーグ

評価:★★★★




 美的感覚に優れた監督は少なくない。例えばウェス・アンダーソンやコーエン兄弟が創り出す画。或いはスパイク・ジョーンズやミシェル・ゴンドリーの世界観。ギレルモ・デル・トロはダークなファンタジーで美を炸裂させる。ティム・バートンと一緒に語られがちだけれど、バートンが別世界に迷い込むのに対し、デル・トロは生活に密着した美に拘っているように見える。美しくも、生臭いのだ。もちろん『シェイプ・オブ・ウォーター』でも…。

 冷戦下のアメリカを舞台に繰り広げられるのは、とある研究所で清掃員として働く中年女と、そこに運び込まれる南米からやってきた謎のクリーチャーの恋模様だ。ヴィジュアルを優先するならば、中年女は美女であっておかしくないし、クリーチャーが半魚人のような近寄りがたい容姿である必要もない。デル・トロが魅せるのは、ふたりが互いの中に自身と似た匂いを感じ取り、惹かれ合う様だ。

 とは言え、ふたりの結びつきは、確かに美しい。女のバスタブでの自慰行為という意表を突く始まりから、青と緑の中間を意識したような画面の中に、生活臭がたっぷり漂う。殺風景な研究所内。殺伐とした人間関係。静けさが冷気を誘う空気。女とクリーチャーは言葉を交わすことなく、しかし、本当に信じられるものを見誤ることなく、距離を縮めていく。

 女をサリー・ホーキンスに演じさせたのが、巧い。所謂万人が認める美女ではないし、若くもない。けれど、佇まいには少女性があり、その息遣いはどんな暮らしぶりなのかを瞬時に悟らせる。もっと簡単に言うと、極めて生々しい存在感なのだ。そのホーキンスが自慰行為に耽る。ヌードにもなる。クリーチャーと合体する。そのえぐ味が世界観を決定づける。日々の生活の中に宿る美を完成させる。

 そもそもデル・トロは、性を大いに意識した画作りに励んでいる。おそらくデル・トロがこの世で信じる物のひとつが、生き物の体温なのではないかと思うのだ。ここに出てくる人々は所謂マイノリティばかりで、それは悪役と言って良い軍人役のマイケル・シャノンとて例外ではない。虐げられる者たちの体温を獲得することで、美に説得力を与える。性はそれを魅せるのに有効かつ魅惑的なものなのだろう。

 もちろん画は美しい。何と言っても目に残るのは、女とクリーチャーが水の中で戯れる場面だ。ふたりが同じ画面に入る場面は、安らぎを感じさせることが多いのだけれど、特に水中カットはえぐ味だけではなく、幻想性も追加され、絵画的美しさを極める。数々の名画へのオマージュが散りばめられる中では、ミュージカル場面の美に胸打たれる。

 そしてクライマックス。この結末は何となく読めなくもないものの、しかしこれ以外考えられない。死や血の香りからも逃れられないデル・トロ ワールドの中、愛が遂に完成する。残酷と官能を同居させながら、宙に舞い上がる代わりに水に沈んでいくその輝きが、切なく後を引く。闇に一筋の光が射す。





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