ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ

ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ “The Big Sick”

監督:マイケル・ショウォルター

出演:クメイル・ナンジアニ、ゾーイ・カザン、ホリー・ハンター、
   レイ・ロマーノ、アヌパム・カー

評価:★★★




 西部劇をめっきり見かけない。エロティック・スリラーも滅びつつある。そして気がつけば、ロマンティック・コメディまで消えかかっている。文句なしの「ロマコメの女王」はメグ・ライアンを最後に出ていないと言って良い。そんなロマコメ好きの嘆きを『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』は少しは和らげてくれるかもしれない。

 パキスタンからの移民である売れないコメディアン青年と、彼のライヴに客として来ていた女子学生の恋。カルチャーギャップの問題が横たわっても特別ではないふたりはしかし、互いに恋しないと言いながら、急速に距離を縮めていく。勉強が忙しいと言ってはキスをし、女とは二日を超えて連続では会わないと言ってはベッドへ直行。なんつーことのない掛け合いに宿る、恋の楽しさよ!

 この際、女をゾーイ・カザンが演じたのが大正解。男を演じるクメイル・ナンジアニ(兼脚本。映画は彼の実話を基にしている)は中東系らしくとにかく濃いぃぃぃ顔なので、カザンの清涼感・透明感が気持ち良いのだ。彼女はシカゴに吹く春風だ。画面をピンクに染める。ところが後半、そんな彼女が謎の奇病で昏睡状態になる。

 あぁ、そういう展開か…と嘆く必要はない。ここで彼女の両親が登場、何と前半以上に大きな笑いを次々投下していくのだから。娘から色々聞いていた両親は当初、青年に冷たい。ところが、いつしかその存在を認めるようになる。文化衝突で笑いを取るだけではなく、人物の人となりを丁寧に掬い上げることでその場の空気にくすぐりを入れる。分かり合うというのはどういうことか、人間愛に通じるそれを不敵に刺激するのだ。

 そして再び配役が効いてくる。両親をレイ・ロマーノとホリー・ハンターが演じるのが最高だ。想い合っているのに、あることがきっかけでぎくしゃくしているふたりの気まずい距離感。娘に酷いことをした憎き青年の真実の姿に触れる喜び。ロマーノとハンターが創り出す奇跡の間合いが、暗くなりそうなストーリーに蹴りを入れる。ロマーノがデカくハンターが小さい、凸凹のヴィジュアルも素晴らしいアクセント。

 つまりこの映画、軽やかなロマコメから始まった物語が、途中から大胆な変態を見せる。原因不明の病や宗教の絡んだ家族という厄介過ぎる問題を絡ませながら、しかし決してその沼に足を取られない。武器はやっぱりユーモアだ。人はどんなときもユーモアなくしては生きてはいけない。しがらみやルール、或いは頑なな価値観に雁字搦めになった人間関係、ここにはそれを度胸良く突っ切る快感がある。それに気づいたとき、人生はまた違う輝きを見せることを知る者による、優しい映画だ。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ