ぼくの名前はズッキーニ

ぼくの名前はズッキーニ “Ma vie de Courgette”

監督:クロード・バラス

声の出演:ガスパール・シュラッター、シクスティーヌ・ミューラ、
   ポラン・ジャクー、ミシェル・ヴュイエルモーズ

評価:★★★★




 何故だろう。アニメーション大国と言われる日本のアニメーションの画から温か味というものを一切感じたことがないのに、一見どうしようもなく暗いスイス・フランス合作アニメーション『ぼくの名前はズッキーニ』の画には、確かに温もりを感じる。手作りのストップモーション・アニメーションというのは、もちろん理由のひとつだろうけれど、それだけではない気がする。

 そもそも主人公ズッキーニの容姿からして、暗い。天然の世界では見かけない青がトレードマーク。髪の毛も目回りも青く、しかもその青は黒が混じっているに違いない、毒々しいそれだ。奇怪なまでに大きく真ん丸の目玉もあって、不気味と言って良いくらいのズッキーニはしかし、「健気」を武器にするような男の子ではない。頭と心で物事を考え、深い喪失感を忘れることなく、自分のできることを着実にこなす。

 母を亡くしたズッキーニが向かうのが孤児院で、あぁ、ここがまた強烈な過去と運命を背負った子どもたちがてんこ盛り。やっぱりか、暗い空気が漂うものの、けれどそれはティム・バートンが描くようなファンタジーの世界に通じるそれではない。どこまでも現実世界と密着した暗さが、子どもたちにまとわりつく。

 普通ならそこには立ち止まりたくない。ところが、この孤児院の暗さが単に沈んだそれではないことが見えてくる。無意識のまま人生に必死に抗う幼い魂の生命力が、躍動を引き寄せる。ここが肝だ。それは喧嘩から始まる人間関係だったり、新しい出会いがもたらすときめきだったり、大人たちの偽りない良心だったり…と養分は色々。要するに人の温かさという言葉にしてもしなくても臭くなってしまうもの、それを信じたくなる魔法がかけられているのだ。

 作り手はその表現に全てを賭ける。粘土の質感を持つ人間の肌とフェルトの優しさを具えた衣服。ぎこちなくも微笑ましいアクション。欧州らしい明け透けなユーモア。物語を包む翳りと光。誰にも愛されていないと嘆く子どもたちの瞳の奥の広がる世界、それを解き放つ語り、それが魔法の正体だ。

 ズッキーニ以外も魅力的なキャラクターがたくさん。中でも秀逸なのは孤児院のリーダー格(暴れん坊で必然的にそうなっているとも言える)のシモンが素晴らしい。社会に絶望した誰よりも傷つきやすい心を持った少年の心模様は、もしかしたらズッキーニ以上の説得力を持つ。だからズッキーニからシモンに届けられる手紙が胸を打つ。ふたりはきっと金では買えないものを知らず知らずのうちに手に入れているのだ。





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