BEST10 & WORST10 2010 Vol.1

◆2010年 BEST10


1. ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い “The Hangover”
 監督:トッド・フィリップス
 出演:ブラッドリー・クーパー、ザック・ガリフィアナキス、エド・ヘルムズ

 汚い言葉が入り乱れ、尻が丸出しになり、嘔吐物が食道を逆流する。酒に負けて記憶をなくしたときの不安感が、弾むリズムによりあっけらかんと描き出されていく快感よ。矛盾を抱えた気持ち良さが軸にあり、破天荒な笑いに完全降伏。画面作りにも想像以上に気が遣われている。虎に赤ん坊、ストリッパーに中国人、果てはマイク・タイソンまでもが視覚を鮮やかに刺激する。

2. 第9地区 “District 9”
 監督:ニール・ブロムカンプ
 出演:シャールト・コプリー、デヴィッド・ジェームズ、ジェイソン・コープ

 社会風刺として観るのは面白くない。独創的な設定を純度100%のエンターテイメントとして提示したところが面白い。緻密に織り上げられた脚本、宇宙船やメカが使われたアクション、脳裏に焼きついて離れないヴィジュアル…隅々まで行き届いた演出家の美学がヒューマンな感動を呼び起こす。絶望と裏切り、そして理解と共鳴が立ち上る画面には幸福が溢れ出ている。


3. (500)日のサマー “(500) Days of Summer”
 監督:マーク・ウェブ
 出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ゾーイ・デシャネル

 女は自分たちの関係をシドとナンシーに例える。男がシドのようには傷つけないと反論すると、女は自分がシドだと言ってのける。核心を突いたこの手のユーモアが全編に渡って散りばめられた脚本が素晴らしい。男が女に惹かれ、女が男に惹かれる。シンプルなその関係の真ん中にある部分がブレていない、ただそれだけが、抗い難い魅力を生み出す。可憐で儚げで、でも力強い生命力。


4. キック・アス “Kick-Ass”
 監督:マシュー・ヴォーン
 出演:アーロン・ジョンソン、クロエ・モレッツ、ニコラス・ケイジ

 優れたパロディ映画は優れた観察眼によって生み出され、そこには本家以上のリアルが息づくもの。冴え渡ったヒーロー考察をベースに正義と悪、銃弾と血、生と死、忠誠と裏切り、暴力と平穏、果ては人生の意味までもが華麗に浮かび上がる。特に暴力に対する向き合い方が秀逸。…なーんてことを考えずにキック・アスとヒットガールに喝采を贈る、その楽しさよ!


 5. 月に囚われた男 “Moon”
 監督:ダンカン・ジョーンズ
 出演:サム・ロックウェル、ケヴィン・スペイシー
 
 何を見せるか、そして何を見せないか。観る者が仕入れるべき必要最小限の情報が効率的に演出され、アナログな魅力溢れる優雅なSFの世界が広がっていく。浮かび上がるのは、生を受けた者の、決して記号化することなどできない複雑な感情。孤独をまとい、懸命に息をして、絶望に突き落とされ、しかしそれでも何かに賭けていく。痛ましくて切なくて、でも力強くもある。


6. 17歳の肖像 “An Education”
 監督:ロネ・シェルフィグ
 出演:キャリー・マリガン、ピーター・サースガード、アルフレッド・モリーナ

 60年代初頭のロンドンで自由奔放に成長していく少女の物語自体は新味のあるものではない。しかし、それを飾り立てる映画の芸の数々がコクを豊かなものにする。中でもヒロインの造形が素晴らしい。父に命じられたレールの上を歩くだけの人生に疑問を抱く聡明さと好奇心に裏打ちされた教養が青春ドラマに蹴りを入れる。主演女優の型にハマらないスピード感と若さ溢れる演技も最高。


7. フローズン・リバー “Frozen River”
 監督:コートニー・ハント
 出演:メリッサ・レオ、ミスティ・アパム、チャーリー・マクダーモット

 極めて地味な話の中に込められた現実問題や心理テーマが多角的に炙り出されていく脚本の芸を見よ。もはや後がない追い詰められた者同士の共感が、複雑なカーヴを描きながら絡まり合う。美化しようと思えばいくらでもできる絆を、横たわる過酷な現実を見据えた上で紡ぎ上げていくところが白眉。密入国問題に留まらないふくよかさが物語を包み込んでいる。


8. 白いリボン “Das weisse Band”
 監督:ミヒャエル・ハネケ
 出演:クリスティアン・フリーデル、レオニー・ベネシュ

 村の住人をアンサンブルで描くミステリー映画の箱を借りながら、悪意そのものを描き出す。人間の毛穴にまで入り込み、ジワジワとそれを画面に染み出させる。嫉妬や無関心、欺瞞や欲望が静かな暴力に変貌を遂げていく、奇怪な捩れ方を見せていくのが恐ろしい。ハネケ自身が住人と同じ目線にまで下りてくることで、画面に奥行きが出た。この邪悪さに猛烈に惹かれるのは、なぜ。


 9. ゾンビランド “Zombieland”

 監督:ルーベン・フライシャー
 出演:ウッディ・ハレルソン、ジェシー・アイゼンバーグ、エマ・ストーン、アビゲイル・ブレスリン

 どす黒い血がグロテスクに飛び散る場面から始まるが、単純なだけのゾンビ映画ではない。恐怖よりも笑いが優先された演出が王道からの逸脱を愉快なものとし、なおかつその緻密な人間関係の刺激が物語の構造に捻りを加える。ドラマとコメディのバランスも見事。生き残るための30のルールと共に、ゾンビが死んでいないことを高らかに宣言する。


10. シングルマン “A Single Man”

 監督:トム・フォード
 出演:コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、マシュー・グード

 60年代の雰囲気が濃厚な褪せた色をベースにした色彩が自在に変化、時代に沿った衣装や家具、小物が的確に配置され、そこに人物を放り込むことで、絵画的な面白さを発散する。人間の動かし方も独創的。しかもなんとも色っぽい。希望と喪失が揺らめいている物語がそれと共鳴し、人生という捉えどころのないものが立ち上がる。フォードの生きるこだわりが題材と重なっていく。


次点. ぼくのエリ 200歳の少女 “Låt den rätte komma in”

 監督:トーマス・アルフレッドソン
 出演:カーレ・ヘーデブラント、リーナ・レアンデション、ペール・ラグナー

 イジメられっ子の少年が自我や性に目覚めていく過程がリリカルに生々しく浮かび上がる。血に塗れた少女のショットは妖しくもロマンティック。少年少女の描き込みが冴え渡り、特にふたりが一緒のベッドの入り込む場面が生み出すサスペンスと緊張感に息を呑む。思春期の不安定さと孤独の匂いが鋭い。北欧の凍てついた空気が、少女と少年を「冷たく」包み込んでいる。


次々点. ザ・ロード “The Road”
 監督:ジョン・ヒルコート
 出演:ヴィゴ・モーテンセン、コディ・スミット=マクフィー

 静止し難い悲劇や耐え難い苦痛が描かれる。それでもファンタジーに逃げたりSFに飛躍することなく、ありのままを見つめ、それゆえに何がしかの「美」を見出す。カメラは父の大きな愛とそれに応える息子の愛を丁寧に撮り上げ、荒涼たる景色のダイナミズムと共鳴させる。「生」と呼応した詩情に包み込まれた物語が伝えるものに、嘘臭さは微塵もない。


次々々点. マチェーテ “Machête”
 監督:ロバート・ロドリゲス、イーサン・マニキス
 出演:ダニー・トレホ、ジェシカ・アルバ、ロバート・デ・ニーロ

 キメの粗い肌。デコボコの鼻。地雷でも入っていそうな目の下の弛み。一週間ぐらい平気で洗ってなさそうな長髪。少なくないシワの中には深く刻まれたヤクザな傷。人を喰ってしまいそうな凶悪面のトレホが全て。ロドリゲスは彼を最大限に生かす術を知っている。視覚を大いに刺激するユーモアたっぷりのアクションを連発し、高らかにB級映画宣言をするのだ。ホンモノの映画愛よ!


アニメーション映画. ヒックとドラゴン “How to Train Your Dragon”
 監督:クリス・サンダース、ディーン・デュボア
 出演:ジェイ・バルチェル、ジェラルド・バトラー、アメリカ・フェレーラ

 飛翔シーンが素晴らしい。怪我を負って巧く飛べなかったドラゴンが、少年の知恵を借りて大空に舞い上がる場面が、幾度となく出てくる。その度にスピード感たっぷりに風を切り、宙を舞う彼らとの一体感に包まれる。3D映像も飛翔場面でこそ、美しく輝く。ドラゴンとの交流を通じて少年が成長していく過程も感動的に描かれて、それが父子ドラマに繋がる脚本も、大変丁寧。


未公開映画. 恋するポルノグラフィティ “Zack and Miri Make a Porno”
 監督:ケヴィン・スミス
 出演:セス・ローゲン、エリザベス・バンクス

 酷くシビアな状況下、前向きさを失わない主人公の男女は好感度抜群。友達だったふたりが互いを意識してしまうという展開に驚きはないものの、その触媒となるのがポルノ映画作りというのが可笑しい。カメラの前でセックスしながら、でも気持ちは「恋人たちの予感」風。無駄が多くて、冗長に感じられても、憎めない愛敬がたっぷり。「チェイシング・エイミー」でスミスに出会った頃を思い出す。



その他のBEST10選考作品
『ラブリーボーン』『パラノーマル・アクティビティ』『抱擁のかけら』『ハート・ロッカー』『マイレージ、マイライフ』『すべて彼女のために』『ローラーガールズ・ダイアリー』『クレイジー・ハート』『クリスマス・ストーリー』『トイ・ストーリー3』『マイ・ライフ、マイ・ファミリー』『恋する宇宙』





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画関連ネタ
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ