デトロイト

デトロイト “Detroit”

監督:キャスリン・ビグロー

出演:アルジー・スミス、ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、
   ジェイソン・ミッチェル、ジャック・レイナー、ベン・オトゥール、
   オースティン・エベール、ジェイコブ・ラティモア、ハンナ・マリー、
   ケイトリン・デヴァー、ネイサン・デイヴィス・ジュニア、
   ペイトン・アレックス・スミス、マルコム・デヴィッド・ケリー、
   ジョン・クラシンスキー、アンソニー・マッキー

評価:★★★★




 今でも白人警官による無抵抗の黒人射殺事件は定期的に流れてくる。耳にする度思う。アメリカは過去から何も学んでいない。強烈な哀しみと呆れ、そして恐怖に襲われ、ため息をつくしかない。『デトロイト』は1967年にアメリカ第五の都市で起きた、無免許酒場の摘発を発端にした暴動の顛末を取り上げる。とりわけキャスリン・ビグローが注目するのは、アルジェ・モーテル事件だ。

 中盤、たっぷり時間を割かれて描かれるそれの、何ともまあ、惨いこと。銃声の聞こえた方向に建つモーテルに宿泊していた、ただそれだけの理由で、廊下の壁に立たされた黒人たち(と白人少女ふたり)が、非人間的な行為の数々で肉体的・精神的に痛めつけられる。聞く耳を持たない白人たちは、躊躇うことなく暴力を振るう。

 特に白人警官のリーダー格、クラウスと紹介される人物が悍ましい。彼が体現するのは正義の危うさだ。彼は自分を差別主義者などとはさらさら思っていない。むしろ、本当に社会が良くなることを考える、真の正義の味方だと信じている。知性のなさがそうさせるのか、育った環境の問題なのか、それとも心が痙攣を起こしているのか。ほとんどホラー映画の殺人鬼的振る舞いだ。

 演じるウィル・ポールターを心から嫌いたくなる。…と言うのは賛辞になるだろうか。まだ経験の浅いだろう若者の、時にあどけなささえ覗かせながらの尋問は、もはや拷問でしかない。そして一度始まった暴走は、傍らの白人ですらも止められない。正義の歪な変態。いや、偽りの正義の変態と言うべきか。この変態は何も差別問題だけに拘るものではない。今の世に蔓延る正義の多くにも通じる。聞く耳を持たないというのはそういうことなのだ。

 ビグローの演出が面白いのは、暴動の細胞のひとつでしかないモーテル事件を抽出して、暴動の外観を描く大技に出ていることだ。もちろん暴動には他にも細かいエピソードがたくさんあるだろうけれど、それらに手を出すことなく、一事件の細胞を詳細に分析することで(視点をいくつも用意する)、全体を浮上させる。この試みは見事に的中。変に彼方此方目を向けるよりも、異様な迫力に包まれる。

 暴動が収まった後、もちろんめでたしめでたしでは終わらない。事件に関わった者は残らず傷を抱える。しかし、元凶である白人警官たちは…。絶望と怒りが常に摩擦を起こしていて、そこから火が立ち上がっている。炎は高くなる一方だ。表面上は静かでも、決して消えない炎。白人たちの多くにはもしかしたら本当に見えていないのではないか。ビグローの嘆きが訴える説得力に全身の力が抜けるのを感じる。





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