ジャコメッティ 最後の肖像

ジャコメッティ 最後の肖像 “Final Portrait”

監督:スタンリー・トゥッチ

出演:ジェフリー・ラッシュ、アーミー・ハマー、クレマンス・ポエジー、
   トニー・シャルーブ、シルヴィー・テステュー

評価:★★★




 芸術家を取り上げた映画には身構える。その才能の爆発と反比例するかのように、乱れた私生活に焦点が当てられ、ドラッグやアルコールが飛び交うのが常だからだ。もしかしたらスタンリー・トゥッチはそういう芸術物に飽き飽きしていたのかもしれない。監督作『ジャコメッティ 最後の肖像』はその類とは趣を異にしている。

 選ばれたのはスイスの芸術家であるアルベルト・ジャコメッティ。彫刻家としてのイメージが強いジャコメッティは、実は肖像画も描いていたようで、彼が作家のジェームズ・ロードをモデルに創作する18日間が切り取られる。多くの芸術家同様、ジャコメッティは変人と言って良い。なかなか作業は進まない。ロードに対して「正面から見ると凶悪犯顔だ」とばっさり。時折禅問答のような会話に突入する。作品が気に入らないと叫ぶ言葉は「ファック!」。妻と愛人が衝突してもお構いなしだ。

 …が、やりたい放題でも、これがシリアスにならない。いや、それどころか創作が行き詰まれば息詰まる程、空気が軽やかになっていくと言っては嘘になるだろうか。トゥッチはジャコメッティを深刻の穴に落とし込むことなく、でもまあ、それが芸術というものの一側面でしょうと呑気な顔をしている。迷宮に迷い込んでなお、何が飛び出すか分からないワクワクするような気配を捉えてみせるのだ。

 ジャコメッティに扮したジェフリー・ラッシュの技が効いているのは間違いない。相変わらず頭のてっぺんからつま先まで神経が行き届いたラッシュは、困ったところの多いジャコメッティのチャームを全開にさせる。注目すべきは、並の役者では欠点にしか映らないだろうところを、魅力として言い包めるところだ(褒めている)。

 だからか、それを受けるロード役のアーミー・ハマーは、演技ではなく、素の笑いとしか思えない表情を見せる場面がある。これがとても良い。いかにも芸術家らしく小汚い佇まいのラッシュとは対照的に、髪をきっちり切り揃え、高級スーツをビシッとキメるハマー。芸術への愛か、ジャコメッティへの尊敬か、精神的にも肉体的にも疲弊しても、それを受け止める器を大きな身体に用意する。ラッシュとハマーの掛け合いがいちばんの見どころであることは間違いない。

 芸術家とモデルの心理的対決を微笑ましく見ながら、トゥッチは己の芸術愛を節々に感じさせる画面を作る。チャコールの色が美しく出た色彩。涼やかなる風を吹かせる構図。ジャコメッティの作品と登場人物が重なる遊び。突然流れ出す軽やかな音楽。それらは全て芸術に対する愛情に繋がっている。トゥッチのジャコメッティ愛、芸術愛が愛嬌となって作品を包み込んでいるのだ。





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