希望のかなた

希望のかなた “Toivon tuolla puolen”

監督:アキ・カウリスマキ

出演:シェルワン・ハジ、サカリ・クオスマネン、
   シーモン・フセイン・アル=バズーン、カイヤ・パカリネン、
   ニロズ・ハジ、イルッカ・コイヴラ、ヤンネ・フーティアイネン、
   マリア・ヤンヴェンフェルニ、カティ・オウティネン、ヴァルプ

評価:★★★★




 アキ・カウリスマキ映画は断然冬に観たい。フィンランドの市井の人々の生活は決して華やかではなく、時に身も心も凍えるほど。したがって視覚的には観ているこちらまで震えが来る。しかし、その中に灯る明かりが、小さくても、この上なく温かいのだ。醜く愚かな人間という生き物を、それでも信じたくなるくらいに。

 『希望のかなた』のカウリスマキはいつも以上に現実社会をシヴィアに眺めている。主人公の青年はシリアからの難民で、家族の大半を亡くし、妹とは離れ離れ。世界に蔓延る憎悪に巻き込まれ、血に染まることも少なくない。彼に手を差し伸べるべき行政はマニュアル通りの反応しか返さない。不寛容が支配する世の中。カウリスマキの嘆きはそこだ。

 不寛容があるなれば、けれど、きっと寛容だって見つけられるはずだ。そうしてカウリスマキは仄かな光を注ぐ。難民青年に助けを差し出すのは、冴えないレストランの従業員たちだ。力のない監督ならば、ここに善意の花を大量に咲かせて自己満足に浸ることだろう。もちろんカウリスマキ映画の住人たちが、善意の大安売りなどするはずがない。

 やっぱりか、ここに出てくる人々はいつも通り、笑顔を封印する。不機嫌顔と言うか、仏頂面と言うか、目つきは悪く、顔の筋肉は硬直したように動かず、口から出てくる言葉は素っ気なくぶっきら棒。必要最低限の態度を崩さない。ミニマムの美学で崖っぷちの難民青年を包み込むのだ。それだからレストランの主人と青年の出会いが最高。互いに一発ずつ殴り、後はケロッとしている。

 カウリスマキ映画の世界に入り込むと、本当に大切なものは正論の範囲には収まらないところにあるとつくづく感じ入る。杓子定規な行動なら誰でもできる。けれど、それを超えたところにある、それを突破しないと届かない、人間の尊厳に通じる何かこそ、本当の宝物なのではないか。危険を冒しても、カウリスマキはそれを凝視することを恐れない。

 この世界での武器は冷静で温かな視線と、そのユーモアだ。当然下品な笑いは目指されない。人間が懸命に生きる先にある、真剣だからこそのおかしみを、ひょいっと金魚すくいの要領で掬い取ってみせる。だからレストランがとんでも鮨屋に化ける件でも、何よりも先に愛嬌が浮上する。誰かをギュッと抱きしめたくなる。





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