ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命

ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命 “The Zookeeper's Wife”

監督:ニキ・カーロ

出演:ジェシカ・チャステイン、ヨハン・ヘルデンベルグ、
   ダニエル・ブリュール、マイケル・マケルハットン、
   イド・ゴールドバーグ、ゴラン・コスティッチ

評価:★★




 ワルシャワのゲットーから助け出されたユダヤ人男が、友人夫妻の家のリビングに到着する。妻と再会した後、ピアノの演奏と共に大量に現れる同胞たちを見る。様々な想いがめぐり、男は涙をこぼす。この場面が臭くならなかったのは偉い。友人夫妻の秘密裏の行動が間違っていないことを、過剰な人情でベタベタにすることなく描き出している。

 『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』の主人公夫妻はワルシャワ動物園を経営している。そのため物語の大半が動物園を舞台にしているのが面白い。ナチスの侵攻と共に多くの動物が殺された後、夫妻がユダヤ人たちを匿うのだ。のどかで家族の匂いの濃い空間に、ナチスとユダヤ人が文字通り隣り合わせにいる緊迫感。ここに動物が大量に顔を見せてくれたら、ますます面白い画になっただろうに、ナチスのバカ、それは実現せず。

 ジェシカ・チャステイン演じるヒロインは、別に鋼のハートの持ち主としては描かれない。恐怖に怯えることを隠さず、それでも正しいと信じることに賭ける。何度もよろめきながら、それでも彼女は聖母のような空気を放つ。命を慈しむ、その尊さが母性と密着した人。押しつけがましくなく、苦難に立ち向かう人々を包み込む慈愛が魅力。それが前述のピアノ場面に通じているのは言わずもがな。

 養豚の輸送のため、夫がゲットーに出入りできることになり、それを活かしてゲットーからユダヤ人を運び出すことにする夫妻。彼らの何年にも渡る決断の詳細はもっと詳しく見たい。動物のエサの下にユダヤ人を隠したり、ピアノをナチスの合図にしたり、髪を染めたり服を変えたりすることでユダヤ人を外に送り出したり…。数えるほどしか作戦が見えてこないのはどうか。

 代わりに差し挟まれるのが、動物学者出身のナチスを巻き込んだ、夫妻との緊張感ある三角関係だ。いや、妻はナチスなど相手にしない。ただ、動物学者が妻に好意を持っていることは明白で、ユダヤ人を守らなければならない立場であるがゆえに、そして相手がナチスであるがゆえに、妻ははっきりと拒否できない。夫はそれを見て嫉妬する。メロドラマか!必要最低限以上の触れ方が腑に落ちず。

 それなれば夫をもっと丁寧に描き出して欲しい。妻以上の危険な綱渡りに挑む夫は、遂にレジスタンスに身を投じ、炎が燃え上がり銃弾が飛び交う中を立ち向かう。彼の目線をもっと大切にしたならば、違う物語が浮上したのではないか。妻の物語に拘るあまり、「戦時下に強く生きた女性」のイメージが時に煩く感じられるのが無念だ。





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