オリエント急行殺人事件

オリエント急行殺人事件 “Murder on the Orient Express”

監督・出演:ケネス・ブラナー

出演:ペネロペ・クルス、ウィレム・デフォー、ジュディ・デンチ、
   ジョニー・デップ、ジョシュ・ギャッド、レスリー・オドム・ジュニア、
   ミシェル・ファイファー、デイジー・リドリー、デレク・ジャコビ、
   マーワン・ケンザリ、オリヴィア・コールマン、
   ルーシー・ボイントン、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、
   セルゲイ・ポルーニン、トム・ベイトマン

評価:★★




 イスタンブール発のオリエント急行内で起こった殺人事件。乗客が等しく全員容疑者となり、エルキュール・ポアロが推理に乗り出す。このアガサ・クリスティの名作『オリエント急行殺人事件』の結末はあまりに有名で、だから作り手も犯人探しには最初からさほど力は入れていないだろう。時代は1930年代、雪山の中で脱線したオリエント急行の細部をゴージャスに描き出すところに、最優先事項があったはずだ。

 確かに列車内部の詳細は見もの。上流階級が乗り込む夜行列車ゆえ、インテリアや絨毯、カーテン等、車内を彩る数々のアイテムに目を奪われるし、ミシェル・ファイファーやデイジー・リドリーらが纏うドレスも鮮やか。ジュディ・デンチの作り込んだメイクも大いに愉快だ。ポワロが初めて列車に乗り込む際の、いよいよ事件が幕を開けるという空気感も悪くない。ただ、視覚効果も入っているのか、どこか作り物的寒々しさも感じる。

 尤も、より大きな問題はポワロが推理する様が、優雅に見えないところだろう。ポワロ自身の体型がもっさりし過ぎているし、何より存在が暑苦しい。髭がやたら大きいのは狙い通りだろうけれど、さほど滑稽味を加えるわけでもなし。何よりポワロを監督でもあるケネス・ブラナーが演じてしまったのが拙い。ブラナー特有の前に前にと出てくる演技姿勢が物語のバランスを壊している。

 とりわけ苛立ちを誘うのが、ポワロを、ブラナーをアップで捉える独白部分。そう言えばこのところ忘れていたけれど、ブラナーは映画界の中でも一二を争うウィリアム・シェイクスピア狂。セリフ回しがいちいち大袈裟でいけない。苦悩しながら事件解決を目指すポワロが己に酔っている風にしか見えなくなってくる。この話はもっと洒落た方向に持っていけなれば、嘘だろう。あぁ、何故ポワロ役を他の俳優に任せられなかったのか。

 ブラナーのセリフ回しも原因のひとつになっているのが、作品を包み込む舞台臭だ。冬の列車内という閉ざされた空間で展開される物語だけれど、密室劇と言うよりは舞台空間を眺めている気配が強い。真相に辿り着くまでの大半が容疑者たちへの聞き込みに充てられ、映画的アクションはほとんど目立たない(あるにはあるものの大変わざとらしい)。ほとんど順番に怪しい一面を見せる容疑者たちのお行儀良さもそれを補強する。

 1974年版に倣ったか、スター俳優たちが集められる。普通これだけ数が揃えば、誰か場をさらう存在感を見せそうなものなのに、これまたいずれもほとんどいるだけの存在感に終わる。まさかのMVP該当者なし。何しろブラナーはポワロ役の自分をいちばん目立たせたいのだ。そのためには他のスターが光っては困る。主役はポワロでも目指すべきは物語の先にある善悪では測れないこの世の無常なのに…だ。オリエント急行が廃止されたのは2009年。そこまで長く人々に愛された列車への敬意も、そう言えば感じられなかった。





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