猫が教えてくれたこと

猫が教えてくれたこと “Kedi”

監督:チェイダ・トルン

評価:★★★★




 犬と猫、どちらが好きかと聞かれたならば、何も迷うことはない、犬だと即答する。いつでもどこでもいじらしく愛を求める犬の人懐こい佇まいよ。ところ構わず抱きしめたい衝動に駆られる。ところが犬と猫、どちらになりたいかと聞かれたなれば、これが猫になるから我ながら我儘だ。勝手気ままに生きたい。人間には構って欲しいときだけ構ってもらえれば良い。『猫が教えてくれたこと』はそういうタイプの人間にぴったりのドキュメンタリーだ。

 舞台はトルコ、イスタンブール。そこは猫カフェ要らずの猫の楽園。街の至るところに猫がいて(多くは野良猫)、映画はそこでそれこそ気ままに暮らす猫たちを追いかける。何しろ「イスタンブールの猫は特別だ。いなければ街は魂を失ってしまう」と紹介されるくらいで、なるほど猫たちの個性を愛でるだけで全く飽きない。

 母になって積極的に街にエサの調達に出る猫。ネズミ退治が天職とばかりに目を光らせる猫。紳士的にエサをねだり高級食材にありつく猫。…容姿も性格も猫の数だけあり、猫好きなら彼らを眺めるだけで天国に行けること請け合い。

 カメラはその魅力を丁寧に探り出す。効果的なのが猫の目の高さで維持される移動撮影。警戒心が強いはずの猫たちがどうしてそれを受け入れたのか分からないけれど、カメラが近くに寄っても奈良公園の鹿のごとく逃げることなく受け入れ、カメラを空気のように見て、普段のペースを崩さない。それだけ人慣れしている猫ばかりということか。猫の高さで見た猫が怯むことなく表情を変化させる。

 彼らを見つめる人間たちも気持ち良い。もちろん猫嫌いもいるだろうと断りつつ紹介されるのは、猫たちを人間の領域に招き入れることを躊躇わず、それゆえ己の人生を豊かにしている者たちだ。ただしベタベタした関係を築いているわけではない。適度な距離感を保っているからこその微笑ましさ気持ち良さ。猫と人間の理想がここにあるのではないか。

 そして、そういう猫と人間を眺めていると、次第にイスタンブールという街までが立体的に浮かび上がる。オスマン帝国の時代から猫を受け入れてきた街は、今なお、歴史を感じさせる風情があり、決して人は少なくないのに、その隙間にある空間がとても心地良くある。猫たちはそこに入り込み、人間の頬を緩ませるのだ。『猫が教えてくれたこと』はそう、猫と人、そして街が美しく求め合う様を描いた映画。作り手の彼らへのラヴレターだ。





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