ラスト・フェイス

ラスト・フェイス “The Last Face”

監督:ショーン・ペン

出演:ハヴィエル・バルデム、シャーリズ・セロン、
   アデル・エグザルコプロス、ジャレッド・ハリス、
   ジャン・レノ、デニス・ニューマン

評価:★




 一体どうしたショーン・ペン。ペンは一流の俳優でありながら、社会とそこに生きる人々を冷静な眼差しで見つめる監督としての才能にも恵まれていた。前監督作「イントゥ・ザ・ワイルド」(07年)など、人間と自然の境界を美しく残酷に溶けさせる技を繰り出していたではないか。それが『ラスト・フェイス』では…。

 舞台の大半はゼロ年代、内戦下にある発展途上国だ。主人公男女はどちらも医師で、無力な人々の命をひとつでも多く助けようと危険地帯に赴き、日夜汗を流している。つまり、立派な人物だ。ペンは物語を、尊敬が互いへの想いのベースに敷かれたメロドラマにしてしまった。尊い志を持ったふたりが多少の意見の違いを乗り越え、情熱的な恋に落ちる。いや、メロドラマならメロドラマでも良い。問題はその見せ方だ。

 組織の理想と現場の現実を衝突させながら語られる彼らの愛は、社会問題に真摯に向き合うふたりの崇高さを過剰に意識したそれになっているのだ。もしかしたら次の瞬間には自分が命を落とすかもしれない。けれど、彼らは恐れない。銃弾も、そして愛することも…。…なんて安いコピーができそうな愛。ペンが彼らの勇気と愛を讃えれば讃えるほど、社会問題の解決にのめり込む俺・私は美しい…などという自己陶酔の気配まで漂い始める。

 ペンはふたりをやたら美しく撮りたがる。文学の引用。静かに鳴り響く弦楽器。思わせぶりなセリフ。過去と現在の交錯。やたら暗がりの多い画。紗がかかったラヴシーン。…そうそう、ラヴシーンに懲るのもこの手の勘違い映画の特徴で、ここでは男が女の脚を舐めるショットをやけに印象的に撮っている。シャーリズ・セロンとハヴィエル・バルデム、「美女と野獣」的配役になっているのも、いかにも、ではないか。

 愛憎場面はどんどん増えていく。けれど、決して社会問題が忘れられない。…というのがペンの自慢したいところのようで、幕間のように内戦の過酷な現実が映し出される。あからさまに遺体を見せるのはもちろん、難民キャンプや少年兵の問題、銃撃が当たり前の日常、先進国頼みの人々、市民レヴェルの虐殺等を恐れることなく見せつける。けれど、それに愛に苦悩する男女の姿が続くとなると、むしろバカにされている気分になるのが普通だろう。

 このところよく聞く言葉に「感動ポルノ」というのがあるけれど、そうだ、この映画にはそれと同じ匂いがあるのだ。戦場で危険に晒されながら愛し合う男女。けれど、ふたりは愛することもなす術のない人々を救うことも諦めない。さあ、このふたりの美しい姿からあなたは何を学びますか?…本当に、一体全体どうしたんだショーン・ペン。





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