IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 “It”

監督:アンディ・ムスキエティ

出演:ジェイデン・リーベラー、ビル・スカルスガルド、
   ジェレミー・レイ・テイラー、ソフィア・リリス、
   フィン・ウォルフハード、ワイアット・オレフ、
   チョーズン・ジェイコブス、ジャック・ディラン・グレイザー、
   ニコラス・ハミルトン、ジャクソン・ロバート・スコット

評価:★★★




 ピエロ恐怖症の人は、大人も子どもも関係なく、思いの外多いらしい。幼少期のサーカス体験による人も少なくないだろうけれど、同じくらいスティーヴン・キングの小説が原因という人もいるのではないか。『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』に出てくるペニーワイズという名のピエロは、間違いなく恐ろしいヴィジュアル。夜中に出くわしたら失禁確実だ。

 下水道の中からこんにちは。初登場場面からペニーワイズ氏はインパクト大。真っ白な肌。ぎょろりとした目。目から裂けた口へと続く赤は血を思わせ、禿げ上がり前面に出た額も奇怪そのもの。演じるビル・スカルスガルドは出落ちにならない佇まいで、絡みついて離れない恐怖を創造する。真っ赤な風船が宙に浮かんでいたら気をつけろ。奴はお前の傍らにいる。彼が口を大きく開けたとき、それは…。

 ただ、このペニーワイズ氏、案外親切でもある。誰もが怪しいと睨む場所から必ず現れるのだ。大抵のホラーは観客の裏をかいて驚かせるものだけれど、ペニーワイズ氏は一貫してベタな場所から登場を決める。もしかしたら捻りなど加えなくても怖ろしいヴィジュアルだと自覚しているのかもしれない。神出鬼没の範囲が固定されている。彼が見せる子どもたち一人ひとりへの恐怖のイメージももう一工夫欲しいところだ。

 キングの小説をベースにした作品だと同じホラーである「シャイニング」(80年)や「ミザリー」(90年)と血縁関係にあるかと思いきや、最も近いのは「スタンド・バイ・ミー」(86年)だろう。ペニーワイズ氏は子どもにしか見えないピエロで、必然的に彼に慄くのも戦いを挑むのも子どもたちになる。少年少女の揺らめきが恐怖の中に封じ込められている。

 自分のアイデンティティーに関する苦悩。何も理解してくれない大人との距離。ただ一緒にいるだけで心休まる友。お喋りや遊び、喧嘩がもたらす幸福。その正体に戸惑うばかりの恋心。何気ないやりとりの中にきらめく思春期の不安定な輝きが愛しい。最初四人組だったのが最終的に七人で恐怖に挑む、その意味は、想像以上に大きなものではないか。

 だからクライマックスの対決には感動を覚える。彼らは単にピエロの正体を探っていたわけではない。「成長」などという簡単な言葉でまとめられてしまいがちだけれど、そんなお利口さんに織り上げられるものではない。それぞれが抱えていた問題と向き合うことで、本当の恐怖を克服する。それがとてつもなく難しいと知っているはずの大人たちは、そのことを忘れていた自分に気づくだろう。27年に一度現れる怪人に立ち向かうことができるのは、やはり子どもでしかない。戦いの後、彼らが見せる余韻が素晴らしい。





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