完全なる報復

完全なる報復 “Law Abiding Citizen”

監督:F・ゲイリー・グレイ

出演:ジェラルド・バトラー、ジェイミー・フォックス、レスリー・ビッブ、
   ブルース・マッギル、コルム・ミーニー、ヴィオラ・デイヴィス、
   マイケル・アービー、レジーナ・ホール、グレゴリー・イッツェン

評価:★




 連続殺人犯が言い放つ。「これは復讐なんかじゃない。司法への挑戦だ」。この言葉に説得力の欠片も与えられなかったあたり、実に虚しい。…と言うか、バカバカしい。多分スリラーのつもりなのだろう。しかし、中盤からはどう寛容な気持ちで臨んでも、ギャグのオンパレード。笑えるギャグならまだいい。笑えない、不快なギャグばかりなのが憂鬱を誘う。

 妻と娘を目の前で殺害された男が主人公。警察のつまらないミスと検察による勝手な司法取り引きにより、主犯格の男が極めて軽い量刑で済まされる。これをきっかけに男は暴走を始める。これ以上ない悲惨な状況には同情を覚えるのだけれど、それに寄り掛かりきりなのは芸がない。男の復讐は、所謂劇場型。非常に凝った仕掛けが用意されているものの(準備期間10年)、結局をそれを魅力的なものに変換できなかったのが致命傷。死刑囚に注射する毒薬をすり替えるだとか、身動きのとれなくなった標的を猟奇的に殺害するとか、イカれているだけの不愉快さが、どんどん色濃くなっていく。これは「知性」なんかでは断じてない。ただ、狂っているだけ。

 なぜだか、標的が死んでいく過程が「ソウ」(04年)風にじっくり撮られている。特に最初の犠牲者の死に様の見せ方には驚いた。ねっとりまとわりつくような視線を保ち、皮膚に異常をきたしながら悶え苦しみ、そして死んでいく様子が楽しげに撮られていて。それだけ男の悲しみが濃いということ?怒りが膨れ上がっているということ?いや、たいして関係のない者まで大々的に巻き込んで、「知性」をアピールするのは調子が良過ぎる。ちょっと「羊たちの沈黙」(91年)の際のハンニバル・レクター博士の影響も感じられるのだけれど、あのエレガントな空気な望めるわけがなく、単に下品なだけで終わっている。下品な殺人鬼、嫌だねー。全くシンパシーを寄せる価値がない。大体殺害していく順番が違うだろう。

 そういう意味で、演じるのがジェラルド・バトラーというのは適役である。もはやこんな役柄でも全く驚かなくなってしまったバトラー。なんとプロデュースまで兼ねる気合いの入れようだ。目に力を入れて、力んでいるだけという、例の演技。苛立ちを誘うことにかけては天下一品。勝手にどーぞ。

 それにしても、最後に明らかになる、犯行の手口には呆れた。殺人犯が刑務所に入っているのにも関わらず続く犯行。そのからくりが遂に判明する。これはほとんど希望が溢れるあの名作への冒涜ではないだろうか。はっきりとバカ。よくバレなかったものだ。引き際までカッコ悪いし。

 被害者が加害者になるというのは、ニール・ジョーダン監督の「ブレイブ ワン」(07年)を連想する。ただし、その見つめ方は驚くほどに異なっている。「ブレイブ ワン」を支えていた誠実さは、『完全なる報復』のどこにも見当たらない。こけおどし的殺害方法と、それに見合った演出に、唖然とするばかりだ。





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