ホワイト・ラバーズ

ホワイト・ラバーズ “Two Lovers and a Bear”

監督:キム・グエン

出演:デイン・デハーン、タチアナ・マスラニー、ゴードン・ピンセント、
   ジョン・ラルストン、カッキー・ピーター

評価:★★★




 何よりも印象的なのは、真っ白な景色だ。それもそのはず、舞台となるのは北極の小さな町だ。動くもの全てを凍らせてしまうような寒さには、時だって敵わない。まるで時間の流れすら止めてしまう低温の地に、過去に傷ついた男女が流れ着いたのは必然だったのかもしれない。

 そう、『ホワイト・ラバーズ』の主人公男女は傷ついている。過去から逃げることしかできなくて、状況を打破したい気持ちはあっても、なかなかそれに向き合えない。ただ、何も考えたくない。デイン・デハーンとタチアナ・マスラニーが傷を舐め合うように惹かれ合う。絶望に支配されたふたりはしかし、遂にそこからの脱出を図る。

 何度もぶつかってはくっつきを繰り返すデハーンとマスラニーは、人は一人でありながら、決して一人では生きていけないという現実を突きつけられる。次第にデハーンとマスラニーが二人で一人に見えてくるのがミソで、それぞれが真っ二つに割れたハートの片方のようだ。ハートにはたくさんのヒビが入る。そのヒビを愛でながら、何とか息をするふたり。

 白銀の世界にたったふたりだけで飛び出す後半はほとんど二人芝居。スノーモービルに乗った冒険は、文字だけだと威勢が良いものの、結局常に孤独につきまとわれる。ただし、スキーに興じたり、ジョークに笑ったり、氷の裂け目に落ちて脱出したり、エスキモーと出会ったり、クマと話したり(この設定はもっと活かせたはず)…と言った何気ないやりとりが、ふたつの魂を癒していく。ここに嫌味がないのが良い。

 デハーンとマスラニーのケミストリーは上々。とりわけデハーンがすっかり大人の表情を見せるのに驚く。かつて前面に出ていた少年性は影を潜め、翳りの中に大人の男を感じさせる。ただ、極寒の地を舞台にしているため、衣装が分厚過ぎてスタイルが分からず、フードのせいで顔が見難いのは残念なところだ。

 冒険の先にハッピーエンドが待っていないことは容易に想像できる。ただ、ふたつの魂がそれでも、絶望に雁字搦めになっていた状態から解き放たれているのは救いなのだろう。ロマンティックな気配を拒否するふたりのラストショットは、むしろほとんどシュールな世界に突入しているものの、それすら狙いのように思える。相変わらず寒く、けれどどこかほんのりとした温かさも感じられるのが面白い。





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