スイス・アーミー・マン

スイス・アーミー・マン “Swiss Army Man”

監督:ダニエル・シャイナート、ダニエル・クワン

出演:ポール・ダノ、ダニエル・ラドクリフ、メアリー・エリザベス・ウィンステッド

評価:★★




 「キャスト・アウェイ」(00年)のトム・ハンクスはウィルソンという名のバレーボールを心の拠り所にしたけれど、『スイス・アーミー・マン』のポール・ダノはメニーという名の死体と交流する。無人島にただ一人漂流したダノが、後に流れ着いたメニーと向き合う内に、生きる喜びを取り戻す。

 …と来れば、当然ブラックユーモアが炸裂する喜劇を期待するわけだけれど、案外その匂いは薄く、喜劇というよりは、コントの趣が強くなってしまった。ダークな笑いよりフィールグッド・ムービーの線を目指したのではないかと勘ぐってしまうところも多い。

 そうなってしまった理由ははっきりしていて、死体を死体らしく描くことを放棄してしまったからだ。ダニエル・ラドクリフ演じるメニーが、フツーの死体だったのは最初だけ。瞬く間に使える死体と化した彼は、事ある毎にダノのピンチを救い、気がつけばフツーの人間と同じように会話までしている。

 いや、最初、腐敗ガスを利用してホバークラフト化する件は可笑しいのだ。話し相手になるのも悪くない(ダノが一方的に話し続ける)。ただその後、気味の悪さはほとんどなくなり、給水器、斧、コンパス、銃、弓矢と使える道具と化し、ダノと対等に話し、遂には人生哲学云々の領域に踏み込んでくると、むしろ鬱陶しさの方が先に来る。作り手が話を転がすため、都合良くメニーを動かしていることが透けて見えるからだ。アイデア倒れと呼ぶことも可能だ。

 最も気に喰わないのは、死体を記憶をなくした状態に置き、かつ率直な物言いと立ち居振る舞いをさせることで、ダノの心象を浮き彫りにするという作法だ。作り手が孤独な魂を、まるで弄んでいるかのように感じられる。その見せ方もワンパターンで想像力が欠けている。

 終幕の展開は明らかに蛇足だ。ダノと観客を現実に引き戻す意味が分からない。虚しさだけが後を引く。手がかけられている割りには抑揚のない死体。最後に大暴れさせる度胸が欲しいところだろう。





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