オン・ザ・ミルキー・ロード

オン・ザ・ミルキー・ロード “On the Milky Road”

監督・出演:エミール・クストリッツァ

出演:モニカ・ベルッチ、プレドラグ・マノイロヴィッチ、
   スロボダ・ミチャロヴィッチ、プレドラグ・“ミキ”・マノイロヴィッチ

評価:★★★★




 久しぶりのエミール・クストリッツァ映画、相変わらず土の匂いが濃厚に立ち込めているのが嬉しい。ここでは息をするもの全てが重要な意味を持つ。すなわち、動物が人間同様に大きな役割を果たすのだ。ハヤブサ、ロバ、ブタ、イヌ、ニワトリ、アヒル、クマ、そして何と言っても大きなヘビ。彼らが人間の傍らで動くとき、それはドラマが動くときだ。

 『オン・ザ・ミルキー・ロード』は簡単に言えば、「何があろうとも互いを愛する」と誓った男女ふたりの物語だ。ミルク配達人の男ととある事情を抱えた花嫁。彼らが愛を貫く様を、戦場に映し出すのがミソ。砂埃舞う中をふたりが、逞しく駆け抜ける。

 前半はいつものクストリッツァ節炸裂と言った趣。のどかな田舎風景に、人々と動物が同じ空気を吸って生きる日常が、騒々しく描き出されていく。ただし、背景には銃撃や爆発がある。主人公の男がそれを大して気にせず闊歩するのが可笑しいやら切ないやら。

 それが後半になって一転、男女の逃避行になる。岩だらけの山中にいようと、鬱蒼と生える草木に迷い込もうと、濁った水の中に潜ろうと、羊の群れに身を隠そうと、一向にクストリッツァの匂いが薄まらないのが素晴らしい。クストリッツァはおそらく本能的に、息をすること、血を流すこと、何より生きることが分かっている人。それが逃避行の節々に感じられるのだ。

 今回は反戦色が非常に濃いのが特徴で、登場人物も、人・動物問わず、次々命を落としていく。長々と凝視するようなことはなくとも、グロテスクな画も少なくない。何の罪もない人間が戦禍に巻き込まれていく不条理さ、無念さに対する怒りも、ヴァイタリティ溢れる画の数々の中にしっかり焼きつけられている。

 クストリッツァは、主演も兼ねている。この顔つきが、期待通り、実に良い。ポール・マッカートニーから洗練さを抜いて、自然児のエッセンスを振りかけたような佇まい。はっきりとごついのだけれど、この手の顔は断然美女が似合うのだ。そう、モニカ・ベルッチのような無敵の美女と完璧な相性を見せる。美しく老け続けるベルッチは、歳を重ねる度にいやらしさが増していく珍しい人で、今回などクストリッツァならではの土臭い世界に放り込まれることで、かえって天女のような気配を感じさせる。まだまだ変身していきそうで目が離せない。

 それにしてもクストリッツァ映画は面白い画がてんこ盛りだ。ブタの血に塗れるアヒル。ミルクを飲むヘビ。ブドウに貼りつく耳。井戸の中の花嫁。…こんなイメージを思いつく映像作家はなかなかいない。思いがけないイメージに出合った瞬間の嬉しさ、それはもちろん映画を観る喜びに繋がる。だからクストリッツァは愛される。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ