ダンケルク

ダンケルク “Dunkirk”

監督:クリストファー・ノーラン

出演:フィオン・ホワイトヘッド、トム・グリン=カーニー、ジャック・ロウデン、
   ハリー・スタイルズ、アナイリン・バーナード、ジェームズ・ダーシー、
   バリー・コーガン、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィ、
   マーク・ライランス、トム・ハーディ

評価:★★★




 そうか、クリストファー・ノーランが実話を基にした映画を撮るのは初めてなのか。独創的な世界観を創り上げてきた人だから、一からイマジネーションを組み立てる方が楽しいのかもしれない。果たして初めて挑む実話物はしかし、隅々にノーランらしさが感じられる画面が並び、気がつけば新感覚の戦争体験に巻き込まれている。

 ノーランが取り上げるのは、第二次世界大戦下、フランスの海沿いの町ダンケルク、敵に包囲された英仏連合軍40万人の救出作戦だ。もちろん銃撃戦は出てくるし、空からの爆撃や、潜水艦の魚雷による攻撃もある。ただ、よりフォーカスされるのは、連合軍の「撤退」だ。ノーランが目指すのは、撤退を目指す、すなわち生きて帰ることを願う兵士たちの心象を、観る者に体感させることだろう。

 そうしてノーランが選ぶのは、説明を極力省く技だった。歴史的に有名な作戦ということもあろうけれど、連合軍の上層部がどう動いていたのかは描かれない。ドイツ軍の斑のある動きも深入りしない。それはつまり、何が起こっているのか、それすら分からない実際の戦場にいる兵士たちの目線を徹底して維持するということだ。フィオン・ホワイトヘッドらの目と21世紀に生きる観客の目が重なる。

 もうひとつノーランが仕掛けるのは、時間の操作だ。「陸」では40万の兵士が海辺に閉じ込められ、「海」では民間船チームが自ら救出に向かい、たった三機の戦闘機は「空」で連係プレイを展開する。「陸」は二地点に分かれるので、実際は四つの場所から物語を繋ぐ。それを時間軸通りに描いては冗長になるだけだろう。それゆえノーランは「陸」は一週間、「海」は一日、「空」は一時間を切り取り、かつ同時進行に描くという大技に出る。

 ノーランはこの技についても大袈裟に触れない。けれど、観客がそれに戸惑うことはないだろう。編集の巧さもさることながら、「陸」「海」「空」がそれぞれ美しく共鳴する場面がいくつも描かれ、最終的に到達する同じ場所に向かって、戦場のエモーションが激しく掻き立てられるからだ。遂に陸海空がひとつになるとき、言いようのないカタルシスが訪れる。

 ノーランの描く戦争は個人的な匂いが強い。国と国がいがみ合う大枠ではなく、それに巻き込まれた人々の心象に寄り添う。その割に人間の顔が印象に残らないのは、それもまた計算なのだろうか。個人を描き、戦争の怪物性を描く試みに勝利していることは間違いない。ただ、戦場の若い魂の肉体性に関してはもっと突っ込んでも良かったのかもしれないと思う。





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