愛する人

愛する人 “Mother and Child”

監督:ロドリゴ・ガルシア

出演:ナオミ・ワッツ、アネット・ベニング、ケリー・ワシントン、
   サミュエル・L・ジャクソン、ジミー・スミッツ、デヴィッド・モース、
   S・エパサ・マーカーソン、チェリー・ジョーンズ、シャリーカ・エップス

評価:★★★




 ロドリゴ・ガルシアは、前作「パッセンジャーズ」(08年)はちょっと毛色が違ったものの、女の人を題材に映画を撮り続けている監督。「彼女を見ればわかること」(99年)「彼女の恋からわかること」(02年)「美しい人」(05年)では女性にこだわったショートストーリーを編み上げることで、一本の映画として軸を通していた。ただ思い入れが強いことは分かっても、実体を伴っていないところが多く、結局自己愛に帰結していくのは大きな問題だったと言える。女性賛美が紋切り型と言い換えても良い。それが『愛する人』では、中心人物を少数に絞り、じっくりその人物像に向き合ったのが良かったのか、ちゃんとザラザラとした手応えのあるドラマを紡ぎ上げている。

 アネット・ベニングとナオミ・ワッツは37年前に生き別れた母娘。14歳で赤ん坊を産んだベニングが、ワッツを養子に出さざるを得なかったのがきっかけ。ベニングは気難しい女として描かれる。ピリピリとした空気を隠そうとせず、他人を自分の世界の中に決して寄せつけない。たとえそこに善意が潜んでいたとしても。ワッツは辛辣な女だ。恵まれた容姿で、仕事はできるし、欲望には忠実。しかしベニング同様、自分の心を曝け出すことなど絶対にせず、極めて合理的な生き方を選ぶ。どちらも手強く、一筋縄ではいかない。「人生は失望の繰り返し」という言葉が出てくるけれど、それを身に沁みて理解しているふたり。

 こういうふたりだから、孤独の影が付きまとうのは当たり前だ。ところが、中盤以降、彼女たちの別の顔が見えてくるのが面白い。ベニングは言い寄ってくる男に、過去に娘を養子に出し、常にそのことについて考えている事実を吐露する。ワッツは予期せぬ妊娠が発覚したことで、完璧だった自己コントロールの術を狂わせる。そしてこれを始まりに、彼女たちはそれまでとは異なる表情を見せる。いや、彼女たちもそういう自分に初めて気づくと言い換えた方がいいか。もちろんそれこそが彼女たちの本質に繋がる。この変貌は、実は序盤の彼女たちの姿からは全く想像できないほど、大きなものだ。一見唐突。しかし、それを唐突に思わせないところがガルシアの腕の見せ所。特別ドラマティックなことは起こらないものの、人間の内面が激しいうねりを上げるところを見逃さない。人物にそっと寄り添うことで奥行きを出すことに成功している。母という生き物、命の繋がりというものが静かに沁みてくる。

 さて、実はベニングとワッツの他にもう一人、重要な人物が出てくる。ケリー・ワシントン演じる養子縁組希望の女だ。ベニング、ワッツとは何の接点もないのに、突如大々的に語られる。どうやら将来的にふたりに関わることになると察しがつくものの、酷くあらかさまで出し抜けなのが残念。せいぜい養子縁組制度にまつわる問題が見えてくるぐらいで、特別面白い心理模様は浮かび上がらない。もっと言うと、作為的である。終幕に手紙に絡めたエピソードがあり、やはり作為が目立つ。作り手はおそらく「贈り物」のつもりなのだろうけれど、違和感は拭えない。

 ベニングとワッツが素晴らしい。どちらも難役。人間の抱えるいやらしさを露にしなければならない役柄で、嫌われるだけで終わる危険を大いに秘めている。それに向き合った凄味がある。そこにはスターとしてのふたりの姿はない。俳優の力というものを思い知らされる。





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