ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択

ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択 “Certain Women”

監督:ケリー・ライヒャルト

出演:ローラ・ダーン、クリステン・スチュワート、ミシェル・ウィリアムス、
   リリー・グラッドストーン、ジェームズ・レグロス、
   ジャレッド・ハリス、ルネ・オーベルジョノワ

評価:★★★




 ローラ・ダーン演じる弁護士は他人や体制を批判し続けるひとりの依頼人に手を焼いている。彼を面倒臭く思いながら、しかし、単調な毎日の中で彼以上に拘ることのできる人間のいない現実。ベッドを共にする男がいても、心は温まらない。背が高く、スレンダーな、ダーンの体躯が何とも寂しい。依頼人が立てこもり事件を起こすことで、現実が僅かに揺らぐ。

 ミシェル・ウィリアムス演じる主婦は新しく建てる予定の家のことで頭がいっぱいだ。夫は協力的とは言い難く、娘は反抗的な態度を隠さない。何のために自分は頑張っているのか、彼女も見えなくなっている。家のために調達したい物資のために出かけた先でもちぐはぐなやりとりは続き、やっと思い通りに事が進むと思っても、気分は一向に晴れない。ウィリアムスの空虚な目が哀しい。

 リリー・グラッドストーン演じる牧場の女は馬の世話に追われる毎日だ。誰とも話さない日も珍しくなく、そんなときふらっと入った建物の中で法律の授業を担当する女弁護士に何かを感じ取る。彼女への関心は膨らむばかりで、積極的に話しかける。孤独からの解放に喜びを感じるものの、その関心は一方通行のそれである現実を突きつけられる。グラッドストーンの肉体が震える様が切なくて切なくて…。

 ケリー・ライヒャルトはこの三つの物語を変に交錯させることなく順番に手掛ける。小細工は彼女たちの心象を悪戯に弄ぶことに繋がりかねないと気づいているのだろう。それぞれが抱える問題を照らし出すことに専念し、その一呼吸の中に込められた複雑な思いを掬い上げることに賭けている。まことに誠実な姿勢だ。

 そうして出来上がった映像は寒々とした気配に満ちている。舞台となるモンタナの田舎町の身体の芯まで冷やす圧倒的寒さが見事に封じ込められる。人が吐く息は白い。そしてそれはあっという間に見えなくなってしまうものだけれど、ここでは吐き出した白い息が白いまま、ずっと宙を彷徨い続けているような感覚を覚える。そしてその息は見方によっては人に優しくも冷たくもなる。

 『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』は間違いなく地味な映画だ。派手な事件は起こらないし、そこに住む女たちの日常を切り取ったに過ぎない。ただ、女たちが欲する物は普遍的でありながら手にすることが思いの外難しく、だからこそ誰もが常に求め続けるそれだ。ゆえに妙に胸がざわつく。時に痛々しくも見える彼女たちの中に入り込み、その痛みを共有するような錯覚を覚える。ライヒャルトの狙いは的確だ。





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