ビニー 信じる男

ビニー 信じる男 “Bleed for This”

監督:ベン・ヤンガー

出演:マイルズ・テラー、アーロン・エッカート、ケイティ・セイガル、
   シアラン・ハインズ、テッド・レヴィン、エドウィン・ロドリゲス

評価:★★★




 ビニー・パジェンサは交通事故で首を骨折、医者から再起不能を宣告されながら復活したボクサーだ。…と書けば、絶望の淵から不死鳥のごとく蘇えった奇跡の人を連想する。ところがベン・ヤンガーは、常人離れした回復力よりも、人間的な飢えにより注目したように思える。パジェンサは「ファイターだから、闘い続ける」と言う。

 対戦相手に挑発的な言葉を投げ掛けるパジェンサは最初、傲慢な男に見える。けれど、印象が変わるのは早い。彼を突き動かすのはまさに、ファイトへの飢え、そのものだ。これまでのボクシング映画は戦いの根底に、愛する人への想いや生活の困窮等現実問題を敷いていたけれど、パジェンサに大義名分は必要ない。純然たるファイターだ(だから事故前のパジェンサの描写が意味を持つ)。

 したがって主人公は少々色気に欠けるかもしれない。あまりにその不屈の闘志が分かりやすいからだ。マイルズ・テラーで言えば、「セッション」(14年)の狂気に満ちた役柄に較べると、単純に見えかねないところだ。しかしヤンガーは、そのシンプルなパジェンサの飢えの中に、何物にも代え難い宝石を見つける。パジェンサは分かりやすい。そしてその分かりやすさに生きる力を存分に漲らせる存在だ。

 テラーもそれを理解した入魂のパフォーマンス。ひたすらに上を目指す肉体に説得力を与えている。アーロン・エッカートも名ボクサーの影に名トレーナーありの鉄則を守り、熱いものをほとばしらせる。パジェンサはひとりでは復活できなかった。そう信じさせる、シンプルでリッチな関係。

 パジェンサには女の影がほとんどちらつかないものの、代わりに家族が見事な空間を創り出し、彼を支えている。息子のいちばんの理解者でありながら、事故後はその復活に手を貸せない父親。息子の試合を見ていられず、いつもキッチンで音声だけを聞いている母親。パジェンサが家族に恵まれた男だったと、しみじみ伝わる家庭描写だ。

 ファイトシーンにはどれだけスタントが使われているのか。ほとんどテラーが自分でやってのけているように見える。やはり役者の肉体がそのまま輝く様を見るのは気持ちが良いものだ。どれだけ血だらけになっても、その鼓動が伝える生命力こそが人の心を捉える。観客はパジェンサの痛みの中に生を感じ取る。ヤンガー、そしてテラーの勝利だ。





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