ボンジュール、アン

ボンジュール、アン “Paris Can Wait”

監督:エレノア・コッポラ

出演:ダイアン・レイン、アルノー・ヴィアール、アレック・ボールドウィン、
   エリーズ・ティエルローイ、セルジュ・オンティエンテ、
   ピエール・キュ、セドリック・モネ

評価:★★★




 ドキュメンタリー「デブラ・ウィンガーを探して」(02年)の中で、「今整形手術を我慢すれば、54歳のとき良い女優が必要になったら一人勝ちよ」と言ったのはフランシス・マクドーマンドだけれど、今のハリウッドのスター女優の中で誰よりも上手に歳を重ねているのは、間違いなくダイアン・レインだ。大抵の女優が(いや、男優もか)ハマりがちなお直しには目もくれず、時の流れに逆らうことなく、それゆえシワは増える一方だけれど、そんな自分を優しく受け入れ、それだからこその美を獲得する。最高に美しい。

 『ボンジュール、アン』は映画プロデューサーの妻である主人公アンが夫のビジネス仲間であるフランス男と一緒にカンヌからパリへドライヴ旅行する話で、次から次へ美味しそうな食べ物やワインが登場、ほっとする田舎風景もたっぷりだ。監督のエレノア・コッポラの実体験が基になっていることが容易に想像できる。なるほど腹がすき、目は癒される。

 けれど、そんなフランスの魅力にレインの魅力が圧勝するのだ。50代が50代のまま輝く。それも人工的な装飾の手を借りず、内面から輝く。しかも、何の嫌味を感じさせることなく。…というのが素晴らしい。ワーカホリックの夫との生活にマンネリを覚えているヒロインが、旅行により本来の自分を取り戻していく。その流れにも綺麗にフィットする。

 実はこれ、近年のレインが得意としているパターンそのものだ。何かしら問題を抱えた女性が何かをきっかけに輝いていく。「オーバー・ザ・ムーン」(99年)「運命の女」(02年)は不倫をきっかけに、「トスカーナの休日」(03年)「理想の恋人.com」(05年)「最後の初恋」(08年)は離婚をきっかけに、「セクレタリアト 奇跡のサラブレッド」(10年)は仕事を始めることをきっかけに…という具合。オードリー・ヘップバーンもどんどん磨かれていく役柄を連発したけれど、ヘップバーンがどんな映画もファンタジーになるのに対し、レインはどこまでも現実的、ナチュラルであり続けるのが面白い。それにヘップバーンの魔法は若いとき限定のそれだったのに対し、レインは50代を迎えてなお、輝きを増している。

 話も役もあまりに直球なコッポラが、レインを起用できたことは幸運だった。レインの役柄に捻りはないものの、過去にちょっとした仕込みがなされている。レインとアルノー・ヴィアール演じるフランス男の過去が明かされることで「フランス食の旅」が違った表情を見せ始める。もっと早いタイミングで過去を明かすとなお効果的だっただろう。ラストショットはコッポラとレインの茶目っ気が可愛らしく出ていてドキッとする。

 そうそう、レインでもうひとつ面白いのは、ヨーロッパの風景に実にさり気なく入りこむところだ。大抵のハリウッド女優はスターオーラの主張が強過ぎて、異分子としてでしか映らなくなる。レインはそのままヨーロッパに溶ける。「リトル・ロマンス」(79年)でパリからヴェネチアへ向かい、フランス男優と結婚・離婚し、「運命の女」で年下のフランス男に溺れ、「トスカーナの休日」でイタリアの田舎町で戯れた。そして今回、再びパリに戻る。嫌いな言葉を使うなら、「自然体」だからこそ、ヨーロッパがレインを受け入れるのだ。





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