ハクソー・リッジ

ハクソー・リッジ “Hacksaw Ridge”

監督:メル・ギブソン

出演:アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、
   ルーク・ブレイシー、ヴィンス・ヴォーン、テリーサ・パーマー、
   ヒューゴ・ウィーヴィング、レイチェル・グリフィス

評価:★★★★




 いよいよアメリカ軍が沖縄に上陸、断崖絶壁(ハクソー・リッジ)を登ってから始まる戦闘が凄まじい。凄惨という言葉だけでは表し切れない驚愕の風景。血が乱れ散り、肉が大地を埋め尽くし、内臓が散乱し、人は火だるまになってのた打ち回る。一秒前まで軽口を叩いてた者の額を銃弾が貫き、仲間を助けようとした者が無残に命を落とす。

 この地獄絵図はほとんど「プライベート・ライアン」(98年)以来のそれと言って良いのではないか。戦時下の音にも敏感なメル・ギブソンが差し出す、現実に容赦はない。涙が出てくる。それは恐ろしいからなのか。それとも悲しいからなのか。それすら分からない。ただ、それが目に焼きついて離れない。

 しかし、『ハクソー・リッジ』にはもうひとつ、瞼の裏にこびりつく画が存在する。その断崖絶壁を、ロープに繋がれた、自分では身動きできない負傷兵たちが次々と降りてくる画だ。崖の上は日本兵だらけの危険地帯。そこで何かが起きている。そしてその何かをやってのけるのが主人公、デズモンド・ドスだ。

 実在の人物だというドスは、戦場にも拘らず、志願兵なのにも拘らず、決して銃を持たなかった青年だ。人を殺すのではなく、人を救うことを目指す。衛生兵と言えど、その徹底した態度が、何十人もの兵士たちの命を救う。崖をロープ一本で降りてくる兵士の画はその象徴だ。ドスの信仰心が大きく取り上げられる。けれど、その言葉だけでは言動に説得力が出ない。そこでギブソンは、時間をたっぷり使い、沖縄上陸前のドスの心の旅を追いかける。

 兄弟との喧嘩の末に石で殴ってしまったこと。車の下敷きになった男を咄嗟の判断で助けたこと。病院で一目惚れした美女に愛を教えられたこと。そして、何より帰還兵だった父の暴力に怯えながら成長してきたこと。ドスという人物を創り上げる上で重要な出来事が的確に映し出され、だからこそ戦場でさえ迷いなく動く彼の意識に崇高さが漂う。

 アンドリュー・ガーフィールドがドスを演じることで、人物像に奥行きが出たことは間違いない。臆病者だと蔑まれた男の見せる、真の強さ。ガーフィールドほど、限りなく純度100%に近いそれを嫌味なく見せられる者はいないだろう。泥塗れ、血塗れになりながら、負傷兵を担いで走り回る様、自身もいつ死ぬか分からないその瞬間にガーフィールドは、どう生きるべきかという、酷くシンプルな問いかけの答えを滲ませる。

 ドスが戦う相手は日本兵というより、戦争そのものだ。そして、ドスはその戦いに勝利する。ドスを見下していた上官や仲間たちのドスを見る目が変わっていく。それはもしかすると、酷く滑稽な態度の変化に映る危険があったはずだ。けれど、決してそうは見えない。ドスを聖人君子にすることなく、生身の人間として立たせ、かつ戦時下での心象を明らかにする。ギブソンがやってのけたことは、何ともまあ、不敵で頼もしいことだ。





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