運命のボタン

運命のボタン “The Box”

監督:リチャード・ケリー

出演:キャメロン・ディアス、ジェームズ・マースデン、フランク・ランジェラ、
   ジェームズ・レブホーン、ホームズ・オズボーン

評価:★★




 リチャード・マシスンによる短編を原作にしたという『運命のボタン』は、取っ掛かりのアイデアが、シンプルながら大変興味深い。主人公夫婦の前に赤いボタンがついた箱がある。ボタンを押すと「100万ドルがもらえる。しかし、代わりに見知らぬ誰かが死ぬ」。果たしてボタンを押しても良いものだろうか。

 非常に冷静かつ常識的、そして退屈な正論で言えば、金と人の命を天秤にかけることなどナンセンス、ボタンは無視するべきだろう。しかし、人間は弱い生き物。たとえ善良な人間であったとしても強欲さを具えているものだ。主人公夫婦も思い悩む。幸せには違いないけれど、金に恵まれないギリギリの生活を送っている。妻は足も不自由だ。序盤は夫婦が突然の事態に苦しむ様が現実味を持って描かれている。もちろん映画の設定は、我々が度々直面を強いられる、人生で決断を下さなければならないときのメタファーになっている。

 果たして夫婦はボタンを押すのだろうか。…という難題はしかし、難題にはなっていない。なぜならこれは映画、押してもらわなければドラマが始まらない。ボタンを押すか押さないかで最後まで引っ張るのは無理だろう。押した後に何が起こるのか。100万ドルをもらって終わらないのが、なんだかコズルイ気がするものの、それは致し方なし。

 困ったのは、ここからだ。夫がNASAで火星に関する職務に就いていることがやけに丁寧に説明されるのが気になっていたら、なんと突如SF的な要素が雪崩れ込んでくるのだ。しかもなにやら哲学的な展開。倫理観に散々揺さぶりをかけられた夫妻が、突如不条理な迷宮に迷い込み、ボタンを押してしまった代償を払わされる。約束が違うのではないかなどという言い分は通用せず、彼らは流されるまま。その流され方が、もうひとつ気持ち良くないのが気にかかる。好みの問題のような気もするけれど、語りのペースがぎこちないためのような気もする。いや、その気持ち良くないところが面白いような気がしないでもないのだ。よく分からないのだ。それが困った気分にさせるのだ。

 監督のリチャード・ケリーは「ドニー・ダーコ」(01年)を撮った人で、なるほど納得。このわけの分からない不安感は「ドニー・ダーコ」を連想する。おそらくケリーは物語の前提にあるボタンを押す押さないよりも、後半の迷宮的展開の方を描きたかったのだろう。惜しむらくは、その思いが強いゆえか、突飛な寓話以上のものが浮かび上がらなかったことか。もっと単純明快なB級風の味付けでも、十分魅せられる題材だと思うのだけれど…。

 キャメロン・ディアスとジェームズ・マースデンはどちらも健闘。ディアスはドラマ演技が安定しているし(スカーフの巻き方に技あり。無茶苦茶カッコイイ)、マースデンは初めて役者らしく見えたと言って良い。特にマースデンがディアスの「相手役」で終わらなかったのは、結構褒められるべきかもしれない。しかし、やっぱり謎の紳士を演じるフランク・ランジェラの妖しさが楽しい。左頬が抉れているという設定で、角度によっては左頬が全く見えない状態になる。その不気味さに魅せられる。多分佇まいに味があるということなのだろう。





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