セールスマン

セールスマン “Forushande”

監督:アスガー・ファルハディ

出演:シャハブ・ホセイニ、タラネ・アリドゥスティ、
   ババク・カリミ、ミナ・サダディ

評価:★★★




 主人公のイラン人夫婦は一緒に劇団に所属するほど仲が良く、だから突き落される現実が余計にやるせない。新居先のアパートで前の住人に間違われた妻がレイプされるという悲劇が起こるのだ。果たして夫妻は犯人を捕まえられるだろうか。

 …なんて単純な展開には見向きもしない。そう、『セールスマン』の監督はイランを代表する映画人アスガー・ファルハディだ。アパートの倒壊やタクシー事情、スイッチを入れると切れる電球等、同国の今を随所に挟みながら、復讐に走る夫と全てを忘れたい妻の溝を炙り出し、夫婦関係というものを凝視する。

 鏡や窓を使ったユニークな構図やカメラの滑らかな移動等、画の技も冴えるファルハディは今回、夫妻の劇団の上演作品「セールスマンの死」の場面を挿入する巧さを見せる。赤狩り時代のアメリカで書かれた戯曲を使って夫妻の今を照らす。ほとんど嫌味じゃないかと言いたくなる正確さだ。

 ただファルハディは、この映画に限ったことではないのだけれど、己の技量に自信があり過ぎるのか、展開をやけに過剰に映画的に飾り立てる癖があり、それが物語に違和感を生じさせる。はっきり言ってしまうと、わざとらしい、ご都合主義に見えることが多い。

 今回だと、クライマックスの展開が、それまでの夫婦の心理的駆け引きが重要視された繊細なドラマから、ハリウッド映画の匂いすら感じさせる派手なスリラーに変貌を遂げるのに仰天。手掛かりの不自然な落とし方や偶然の畳み掛けの先に娯楽の気配を感じさせる。

 いや、映画は基本娯楽なのだから別に悪いことではない。ただ、おそらくファルハディ本人はこれを大真面目に撮っている。作り手に都合の良い出来事が並び、映画どんどん派手になっていくのに気づかず、あくまで芸術映画、社会派映画として撮っている。それが観客との間に隙間を生む。ファルハディ映画が良くできていても、どこか冷めて見えるのはそういうわけなのだ。





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