ブロークン 過去に囚われた男

ブロークン 過去に囚われた男 “Manglehorn”

監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン

出演:アル・パチーノ、ホリー・ハンター、ハーモニー・コリン、
   クリス・メッシーナ、スカイラー・ギャスパー、ブライアン・メイズ

評価:★★




 「君を想わない日は一日もない」。鍵の修理屋として慎ましく生きるアル・パチーノが、過去に愛した女へのラヴレターを読み上げる。80歳が近づいてきたパチーノを未だ支配する過去の情熱的な愛。おそらく別れてから相当年月が流れている。一途と言うよりも女々しいとする方がしっくりくるけれど、案外これにシンパシーを覚える。確かにいつまでも胸から離れない、離れてくれない愛というものはある。

 『ブロークン 過去に囚われた男』には物語らしい物語はない。最近食欲のない白猫と銀行の受付係の女との交流だけがパチーノの心を慰める。その日常を綴る。男は不器用という設定なのか、他者との掛け合いに問題がある。そして、その度に人を傷つけるところがある。孤独に支配された男の佇まいとしては平凡だ。

 ただ、パチーノが一時の「演技過剰期」から抜け出し、枯れた味を楽し気に忍ばせるので(それでも同年代の俳優たちより大分ギラギラしている)、画面には多少の詩情が漂う。娯楽からは程遠い寂しく暗い部屋、猫と佇む画など、それだけで魅せてしまうのだ。そこに漂う何かしらのニュアンスを味わうための映画かもしれない。

 職業上深く関わる「鍵」が象徴的に扱われているあたりは、デヴィッド・ゴードン・グリーンの巧さだろうか。猫の食欲不振の原因が鍵を呑み込んでしまったことにあり、手術をしなくてはならなくなる件など、男の人生を上手く暗示している。クライマックスでパチーノが開ける鍵の先には何があるのか、パントマイマーを使った掛け合いを放り込むのも良く考えられている。

 パチーノは難しい男の役がピタリとハマる。彼が物分かり良くおとなしい男だったことはない。ただ、つまりこれは見慣れた光景ということになる。ホリー・ハンターとレストランで食事する場面、あまりにも無神経な言葉の洪水は、いかにパチーノと言えど、いやパチーノだから余計に腹立たしい。安定の不快さはパチーノのセルフイメージに寄り掛かり過ぎた結果かもしれない。

 パチーノにはもっと攻めて欲しい気がする。まあ、若くない。俳優人生も先が見えてきたと言えるのかもしれない。それでも彼には若い頃の血気盛んな気配を忘れて欲しくない。断っておくと、それは「演技過剰」に走れということではない。演技を抑えたまま、攻めを見せて欲しいのだ。もちろんそれが可能な人だ。人生を振り返る役柄ではなく、人生を突っ切る役柄で熱くさせて欲しい。





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