ロンドン・ロード ある殺人に関する証言

ロンドン・ロード ある殺人に関する証言 “London Road”

監督:ルーファス・ノリス

出演:オリヴィア・コールマン、アニタ・ドブソン、
   クレア・バート、ケイト・フリートウッド、トム・ハーディ

評価:★★




 マイッタ。トム・ハーディの名前があったので、てっきり彼が歌い踊る、それはそれは珍しいミュージカルなのではないかと想像していたら、ハーディの出番は極僅か。タクシー運転手に扮して、狭いタクシー内、語るように(上手いんだか下手なんだか判断し難いまま)ぼそぼそ歌うだけなのだ。こんなチョイ役でもスター性抜群であることは分かる。でも、ハーディに関して言えば、それだけだ。

 『ロンドン・ロード ある殺人事件に関する証言』はしかし、珍しいミュージカルであることは間違いない。フレッド・アステアやジーン・ケリーが出てくるような胸踊るハリウッドミュージカルが王道だとするなら、それとは明らかにアプローチが異なる。舞台劇(英国ロイヤル・ナショナル・シアター)の映画化というのは昨今の流行りに乗っ取っているものの、細部は異色だらけだ。

 そもそも話が2006年、郊外の街イプスウィッチで起こった売春婦連続殺人事件という陰鬱な題材を取り上げているし、歌は実際のインタヴューで発せられた言葉を基に語り上げるタイプのそれ。ダンスはなく、スターも出ず(ハーディは例外)、ミュージカル的高揚感は端から狙っていない。大胆な試みではあるものの、しかし、不敵ではないか。何と言うか、舞台をそのまま映像に起こしただけの画が並ぶ。

 例えばそれは、一直線の物語に如実に表れる。売春婦の増加に頭を悩ませる町で起こった殺人事件。住民の疑心暗鬼。逮捕と野次馬根性。裁判の行方。町の復興を目指す人々。売春婦たちの気持ちの変化。事件経過を抑揚なく見せられている気分になる。

 映画への翻訳はもっと豪快になるべきだ。例えば、復興を目指して行われるガーデン作りを前面に押し出せば突き抜けた明るさが出そうだし、「心の中では売春婦を排除してくれた犯人に感謝している」という住人の言葉の裏にある闇を抉り出せばダークな味が浮上するだろう。ひとりの女の意味深な表情を捉えた終幕の画など、その可能性を大いに感じさせるではないか。

 そう言えば、この映画にはたった一曲も胸に残る楽曲が出てこないのだ。セリフがそのまま歌になっているからというものあるけれど、ミュージカルというジャンル、或いは映画という芸術に関する根本的な考え方が、スノッブ方面にずれているのがいちばんの原因ではないか。作り手の嫌味な姿勢を感じることすらあった。





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