砂の城

砂の城 “Sand Castle”

監督:フェルナンド・コインブラ

出演:ニコラス・ホルト、ローガン・マーシャル・グリーン、
   ヘンリー・カヴィル、グレン・パウエル、ニール・ブラウン・ジュニア、
   ボー・ナップ、サミー・シーク、ゴンザロ・メネンデス、
   サム・スプルエル、ナヴィド・ネガーバン、トミー・フラナガン

評価:★★




 ニコラス・ホルト演じるマット・オークルは学費を稼ぐためにアメリカ兵としてイラクにやって来る。自分を恥じながらも、わざと左手を負傷して帰還を狙う、そんなどこにでもいそうな兵士だ。『砂の城』は、大量破壊兵器の保有を名目にアメリカ軍がイラク侵攻した2003年を舞台に、オークルの変化を追う。

 …追う物語のはずなのだけれど、オークルの描写に狂言回し以上のものが感じられないのがじれったい。逃げ腰だった青年が、苛烈な任務に疲弊し、仲間の死に衝撃を受け、善良な地元民に温かいものを感じ、しかし不条理に打ちのめされ、いつしか戦場に執着と呼べるようなものを抱えるまでになる。その道筋だけは明確に提示されているものの、そうやってわかりやすく説明できてしまうのが問題だ。

 本当の戦場は(…と言っても大抵の人は知らないわけだけれど)、善悪の境界が曖昧になるのはもちろんのこと、自分というものをしかと持った大の大人でさえも、思いがけない袋小路に迷い込むものだろう。名作と言われる戦争映画が突いてきたことだ。オークルは確かに変化する。でもその変化の仕方がお行儀良くて、かえって引っ掛かるのだ。

 細部のエピソードに面白いものがある。村人を助けるためポンプ場の修繕にやってきても歓迎されないどころか、敵意を丸出しにされる描写。娘を連れて薬局に急ぐ父親を敵だと勘違いする描写。作業の合間、昼飯を突くときの食べ物の交換に緊張が走る描写。小さなやりとりが戦争の痛みを積み上げていく。

 ただ、どうしてもアメリカ兵側寄りの見方になる。普段は汚い言葉を掛け合っている兵士たちの絆。求められていないのに手を差し伸べる兵士たちの忠誠心。攻撃の巻き添えになり死んだ人々に感じる兵士たちの罪悪感。戦争の不条理を描きながら、同時に「善意の国アメリカはこれだけのことをやっているんだ!」という気配がちらつくのだ。自己憐憫という言葉まで思い浮かぶ。これは気持ちの悪い事態だ。

 正直なところ、アメリカの良心はここではさほど重要ではない。アメリカの介入により混沌に巻き込まれた人々の心の揺れの方が気にかかる。イラクの人々を簡単に、アメリカに理解のある人とない人に分けることなどせず、その難しい立場にもっと突っ込んで欲しかった。まだ戦争の毒気に塗れていないオークルは、それを肌で感じるのに最適の人物だったはずだ。





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