タルーラ 彼女たちの事情

タルーラ 彼女たちの事情 “Tallulah”

監督:シアン・ヘダー

出演:エレン・ペイジ、アリソン・ジャニー、タミー・ブランチャード、
   エヴァン・ジョニカイト、ジョン・ベンジャミン・ヒッキー、
   ザッカリー・クイント、ウゾ・アドゥーバ、デヴィッド・ザヤス

評価:★★★




 三人の女が出てくる。ひとりは小汚いヴァンだけを頼りにほとんどホームレス状態の若い女(エレン・ペイジ)。その元恋人の母親(アリソン・ジャニー)。そして育児ノイローゼ気味、或いは育児放棄気味の新米ママ(タミー・ブランチャード)。全く生きている環境が違う三人を、やっと歩き出したばかりの赤ん坊が結びつける。『タルーラ 彼女たちの事情』は彼女たちの繋がりに焦点を当てたメロドラマにしなかった。そして代わりに、彼女たちのアイデンティティーを探り出す。

 筋だけ取り出せば犯罪ドラマと疑似家族ドラマをミックスさせたような話だ。ペイジが衝動的にブランチャードの赤ん坊を誘拐、消えた恋人の母であるジャニーの下に転がり込んで、子育てを始める。実際、ペイジとジャニーは最初の反発はどこへやら、いつしか素っ気ない中にどこか温かさを感じさせるようになる。

 ただ、作り手はその微温湯に浸からせるばかりのなのは賢明ではないと判断したのだろう。赤ん坊を触媒に、彼女たちの、自分が何者なのかという永遠なる問いを求め続ける、不安定な魂としての姿を露わにさせる。考えてみればペイジが消えた男に拘るのは妙だし、ジャニーがペイジを意外なほど寛容に受け入れるのも理解し難い。子どもを寄せつけなかったブランチャードが子ども捜しに必死になるのも違和感を覚える。

 見えてくるのは、彼女たちがどんな生き方をしてきたのか、そしてそれゆえ何を求めているのか、ということだ。ペイジが重力について話す場面、或いは身体が宙に浮き上がる場面がそれを読み解くヒントになる。作り手は彼女たちの過去を微かに匂わせ、そのどうしようもない飢餓感を凝視する。

 この物語を道徳的観点で斬ることは間違いだ。そもそも作り手は、観る者を彼女たちの時に愚かに映る言動に安っぽく共感させようなどとは端から思っていない。自分は何者か。自分はどこにいるべきか。自分はどこに向かうべきか。彼女たちが他者と関わることでそれを明確にし、人生のエンジンを再点火する、それだけを明瞭にする。その先が暗いのか、明るいのか。それはどちらでも良い。エンジンの回転により人生が動き出す。ただ一点、その価値に賭けている。

 無責任な母親の姿がさほど印象に残らないのはブランチャードと演出のせいだけれど、ペイジとジャニーはやっぱり巧い。相変わらず不機嫌な表情が似合うペイジの演技のスピード感は気持ち良いし、ジャニーの珍しや「女」を前面に出した表情は新鮮だ。とりわけジャニーは、夫の同性愛が判明したことで別れた女の複雑な心理を繊細に見せる。ジャニーがペイジに向ける眼差しの変化は大いに見ものだ。





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