ビースト・オブ・ノー・ネーション

ビースト・オブ・ノー・ネーション “Beasts of No Nation”

監督:キャリー・ジョージ・フクナガ

出演:エイブラハム・アター、イドリス・エルハバ、カート・エイジアイアワン、
   ジュード・アキューダイク、エマニュエル・ニ・アドム・クェイ

評価:★★★




 アフリカにある架空の国が舞台ではあるものの、『ビースト・オブ・ノー・ネーション』が描く出来事はもちろん絵空事ではない。政府軍と反乱軍による内戦下、貧しいながらも父母や兄弟らと楽しく暮らしていた主人公少年アグーが政府軍の非人道的行為に巻き込まれ、逃げた先の森の中、反乱軍の戦力として強制的に鍛え上げられる。そう、アグーはチャイルドソルジャー、少年兵となるのだ。

 アグーが兵士になっていく過程が恐ろしい。わけもわからないまま仲間について回り、反乱軍や指揮官を讃える歌を歌い、銃器を運び、銃弾が飛び交う中を駆け回り、遂には人を殺める。アグーは言う。「死体の匂いを知った」と…。アグーは兵士にならなければ殺されていた。生きる手段だった少年兵になるという選択が、いつしか生きる目的に変わっていく。

 キャリー・ジョージ・フクナガは目を背けたくなる戦時下の現実を効率的に描写していく。戦場に綺麗な画は要らないとばかりに直接的な描写も多いものの、意外に至近距離での殺人には配慮が見られる。ただ、アグーが最初の殺しを経験する場面は別だ。アグーが振り下ろす鉈が無抵抗の若者の脳天に突き刺さる。それをまざまざと見せる。その衝撃。銃で死んでいくことなんて甘っちょろい。そう思わせてしまうショッキングな件だ。子どもが子どもを殺めるシークエンス等、他にも要所要所で残酷な画が落とされる。

 アグーが加入する一団を率いる指揮官も緻密に描き込まれていく。悪魔的な言動で隊を率いながら、カリスマ性としか言いようのないものを湛えた佇まい。イドリス・エルバの演技がそう見せるのか、恐ろしい行為に走れば走るほど引き寄せられる恐怖。まるで兵士たちは彼の催眠術にでもかかっているかのようにきびきび動く。躊躇いがない。

 ただし、フクナガは指揮官にも容赦ない現実をぶつけることを忘れない。彼もまた組織の駒のひとつに過ぎず、それに彼自身が気づいた直後あたりから、そのカリスマ性を木っ端微塵に打ち砕いていくのだ。そしてそれゆえ指揮官が暴走を始めるのがまた恐ろしい。エルバの顔からどんどん生気が失われていく。

 そして、いつしか画面には詩情が漂い始める。平和な場所に生まれたならば一生知ることなく済んだかもしれない過酷な状況に揉まれたアグーは、僅かな期間で人生の哀れを全て悟ってしまったかのような表情を見せる。愛し愛された父母の影響だろう、神と対話を続ける彼自身が詩として大地に佇む。フクナガはそこに僅かな希望を見る。アグーとほとんど同化する気配を見せるエイブラハム・アターの、まだ幼い身体が海に向かって駆けていく画に不思議な安らぎがある。





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