最後の追跡

最後の追跡 “Hell or High Water”

監督:デヴィッド・マッケンジー

出演:ジェフ・ブリッジス、クリス・パイン、ベン・フォスター、
   ギル・バーミンガム、デイル・ディッキー、ケイティ・ミクソン、
   ケヴィン・ランキン、マリン・アイルランド

評価:★★★★




 プロットだけ取り出すと何の変哲もない現代西部劇にカテゴライズできそうな『最後の追跡』はしかし、実のところ、その枠に留まらない大きさと深さを感じさせる映画だ。何の大きさと深さか。もちろんアメリカだ。銀行強盗を繰り返す兄弟と彼らを追うテキサスレンジャーの姿を通じ、その一筋縄では行かない現実を炙り出す。

 強盗の手口が凝っていたり、換金法が捻られていたり…ということはない。あくまで強盗は淡々と進み、レンジャーが煌めく推理力で兄弟を追い詰める画も出てこない。デヴィッド・マッケンジーの狙いは彼らの姿にアメリカを映し出すことだ。

 兄弟の強盗の理由は、母の遺した牧場を守るべための金の捻出にある。銀行のやり口にハメられたと言っても、強盗は推奨できるものではない。でもそこまで追い詰められた人々が、この大自然が広がるテキサスには普通にいる。建物の壁には「3回イラクに支援に行ったが、何の支援もなし」の落書き。「借金でお困りですか?」と語りかける看板。牧場主は野火に追われ、町は閑散。顔を合わせる人々は老人ばかりで、仕事も娯楽も何もない中、でも彼らは銃で武装することだけは忘れない。

 マッケンジーはこの現実を十分過ぎる光量で照らし出す。そして、美しい景色の中でもがく無鉄砲な兄と堅実な弟が湛えるたっぷりの絶望と僅かな希望を凝視する。すると、善悪の境界が曖昧になる。華やかなる大都会とは全く表情の違う田舎町ではとっくに始まっている。白人たちの激しい転落が…。事件に思いがけず関わった人々の姿からもそれは哀しいほどに読み取ることができる。

 兄弟に扮したベン・フォスターとクリス・パインが動く度、彼らが纏う寂しい空気が毛穴に沁み込んでくる。彼らは欲深い人間ではない。愚かな行動に走ることの多いフォスターも、その言動の底には家族愛が敷かれている。いや、もはや彼らはそれしか縋るものがないのかもしれない。見捨てられたアメリカが咽び泣く。

 ジェフ・ブリッジスが体現するレンジャーは、それこそ西部劇に出てきそうな善きアメリカを象徴する男だ。口は悪く、相棒をからかってばかり。けれど、仕事には忠実で、女子どもにも優しい。その彼が終幕にパインと言葉を交わす場面は重要だ。的確な捜査と判断により真実に辿り着こうとするブリッジスですら、混沌の中で迷子になっているように見えるのだ。アメリカの闇はそれだけ深く険しい。乾いた大地で風に揺れる草木はそれに必死に抗っているかのようだ。





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